住民のチャレンジを地域の魅力に変える「まちフェス」【後編】

よそ者が少ないからこそ地元住民の力を

【事務局の様子】「チラシに駅からの距離を書いておけばよかった」 「キャンセルが出たので、赤字になりそう・・」、毎週の会議に熱が入る

 未経験の彼らが大規模プロジェクトを実現できた最大の理由は、やはり地元への思いだろう。「まちフェス」を実施する3町は、北東には多くの犠牲者を出した宮城県石巻市、南には原発事故の被害に見舞われた福島県相馬市が位置しており、マスコミの注目度が低い。復興で大きな役割を担うといわれる「よそ者」の流入が少ない一方で、事務局の多くを占める地元出身者の使命感が強く表出した。

 事務局メンバーの岩佐勝太さん(30)は仙台で講師の仕事をしていたが、震災後に山元町の地元団体に転職。ボランティアで「まちフェス」の事務局の仕事をしている。震災直後に他県の応援をたくさん頂いた一方で、地元の人間として「生き残った意義」を考えた。

 「とにかく、いまの自分の想いを形にしたい。でも『正しいこと』も『常識』も震災で崩れてしまったので、今は『納得できること』をしようと考えている。そのひとつが、まちフェスなんです」。

 内発的なエネルギーは、結果として外に伝わり、あらたなエネルギーを運んでくる。両者が交差したとき、まちは何倍にも輝くに違いない。

まちフェス【プログラムの例】

東林寺座禅会

新地にあるお寺「東林寺」の住職・本田和也氏による座禅会。住職の福島弁が親しみやすく、若い参加者も楽しめた。「貴重な体験が出来た」「私は煩悩だらけ」とは参加者のコメント。

新地で民話・被災体験を聴きながら、歩く被災地

民話を語り継ぐ達人・村上美保子さんによるプログラムで、町を歩きながら被災体験を聞くプログラム。他地域からの参加者も多く、震災から1年10ヶ月の節目に改めて防災について考えた。

【まだ参加できる! 注目プログラム】

とりあえず喰え、俺の「ひっつみ」

「亘理のことなら何でも知っている!」と豪語する名物オヤジ「かずおさん」と、ひっつみ鍋を囲みながら語る会。
2月9日(土)11:00〜13:00 @亘理町ベリーズガーデンいつき
参加費:1000円(ひっつみ鍋つき)

7つ道具をゲットせよ!伊達藩オリエンテーリング

こだわりのモノづくり職人を歩いて尋ねるオリエンテーリング。「達人」と呼べる人材があまりにも多く、1度で7名に会える贅沢なプログラムにした。
2月10日(日)9:00〜12:00 @山元町中央公民館入口集合
参加費:1500円(2人1チーム)

※参加申込はmachifes.onpaku.comまで

注目の達人●京工房 菅野京子さん

いまも昔も人前では「もじもじ」

 達人として最初にワークショップをしたのは12年の2月です。地元の野菜で「焼き肉のタレ」をつくったところ、とても喜んで頂きました。それ以降も多くの場所で開催しましたが、実はいまも慣れません。みんなの前に立つと緊張して、目を見ることが出来ないんです。

 今回の「まちフェス」では、「亘理の復興サツマイモ」を使ったジャムづくりをします。でもやっぱり緊張するだろうと思った事務局の方が、ワークショップ名を「もじもじ農家妻とつくる、サツマイモde新作ジャム」にしました。

参加者との縁が商品改良につながった

 ワークショップに出ることで「何か変わりましたか」と聞かれますが、私は何も変わりません。

 確かに、震災前に販売していた「焼き肉のたれ」は、中身が一新され「京子の万能ダレ」に変わりました。当初は商品名に「京子」と入れるつもりはありませんでしたが、ワークショップの参加者から「味に自信があるなら入れたら?」と提案されました。またある参加者のお知り合いにデザイナーさんがいらっしゃったようで、商品のラベルを見違えるように美しくして下さいました(笑)。私の変化は、周りの人から起こったものです。

 私はそのままですが、とにかく前向きな気持ちでいようと思っています。それが伝われば、よい方に恵まれるのだと分かりました。

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