林業とエネルギーの明日を考える 岩手県住田町の挑戦【後編】

2.行政 PRや外部ネットワークで成長を後押し
「バイオマス需要の増加に期待」

住田町産業振興課 副主幹 伊藤愛さん

 住田町は、2000年に地域新エネルギービジョンを策定。「森林エネルギーのまちの実現」を基本理念に据え、以来継続して町内への木質バイオマスエネルギー施設の導入を進めて来た。昨年度までで合計157のペレット(おが粉やかんなく屑などを圧縮させてつくる固形燃料)ストーブと2台のボイラー、1台の発電施設を一般家庭や公共施設などに導入した。

 また、木質バイオマスの大きな供給先として期待されているのは、来年度に着工予定の住田町の新庁舎だ。林野庁の「公共建築物木材利用促進法」に則り建設されるもので、「発電まで行うかは未定」とのことだが、木質バイオマスを活用するボイラーを設置し、発熱及び地域熱への活用を試みる。

 そのうえで住田町の伊藤さんは「町のPRや外部とのネットワークづくりにも力を入れたい」と語る。内陸部にあった住田町は震災後、町の木を使って木造の仮設住宅を93棟建設。結露が出にくいなどの効果もあるといい、町のPR資源として昨年多くの県外の展示会などで発表の機会があったと言う。

 後述の森林保全団体「more trees」との提携が仮設住宅へのペレットストーブ提供へとつながった通り、町外とのつながりによる可能性の広がりは大きい。「ペレットストーブによりペレット需要は伸びています。成長分野として期待したい」伊藤さんの言葉の通りとなるか、今後に注目したい。

3.NPO 90台のペレットストーブを提供
「地元の木材がエネルギーになることを知ってもらいたい」

一般社団法人more trees 事務局長  水谷伸吉さん

 音楽家の坂本龍一氏が中心となり07年に設立された森林保全団体「more trees」は、行政や森林組合との協力のもと、全国11の地域で木を間引く「間伐」を推進している。またオリジナルプロダクトの開発・販売や、カーボンオフセットの推進により、都市と森林をつなげる役割も担う。

 昨年3月には、震災の復興支援プロジェクト「Life311」を立上げ、林業が盛んだった岩手県住田町の支援を開始。現在のところ、住田町の木材を使った仮設住宅の建設費約1億2000万円、木質燃料のペレットを利用するペレットストーブ90台を提供した。

 目的は地域経済の活性化にある。ストーブは1台20万円と高額だが、燃料となる木質ペレットの価格は灯油と大差ない。さらに現地の木材から生成されたペレットを利用すれば、エネルギーの地産地消にも貢献でき、さらに地域経済の循環に寄与できると考えた。再生エネルギーの分野では風力や地熱発電が注目されているが、事務局長・水谷伸吉さんは「地元の木材がエネルギーになることを知ってもらえたら」と語る。

 利用者からは「煙が出なくて安全」「燃料が小さくて置き場所に困らない」という声も挙がっており、産業や経済面のみならず、商品としての価値も浸透しつつある。住田町のエネルギーシフトの後押しになることを期待したい。

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