地域住民主体のまちづくりを考える【前編】

浪江町 復興ビジョンに学ぶ住民意見の吸い上げ方

4月19日、原発事故の影響で全町避難している福島県双葉郡浪江町は、町議会において同町の復興ビジョンを正式に決定した。町外でのコミュニティ「リトル浪江」づくりをはじめとしたその内容とともに、町民の意見を徹底的に吸い上げたその策定プロセスは、いずれもオリジナルなものとなった。各市町村で住民主体のまちづくりの必要性が叫ばれるなか、1つのモデルとしての可能性を探るべく、町役場の避難先である二本松を訪れた。

帰還する人もしない人も町民一人ひとりの幸せを追求

復興ビジョン

決定した復興ビジョン(66P)、子供アンケート結果(80P)、町民アンケート結果(106P)。これに自由記入回答結果も含めた膨大な資料が全町民に配布される

 策定された復興ビジョンでは、「すべての町民の暮らしの再建」と「ふるさとの再生」の2つの分野における取り組みが、短期(14年3月まで)中期(16年3月まで)そして長期(21年3月まで)の3段階に分けて分類されている(左表)。

 特徴的なのは、個々人の多様な考えを尊重するという基本方針のもと、町への帰還を希望する町民にもそうでない町民にも、想いに応じた選択肢を提供していこうという姿勢だ。町外に暮らす町民のため、浪江町以外に浜通りおよび中通りにも集約した町外コミュニティをつくるとともに、他地域で不便無く暮らせる制度を構築するといった内容となっている。

 このビジョンの前提となっているのは、全町民を対象としたアンケート結果(約1万1千人)やパブリックコメント(220件)だ。帰還意思では、除染や生活基盤整備の有無を問わず約3人に1人が戻らないと回答しており、20代30代の女性に限ってはそれが全体の半数を超える厳しい現状がある。そのようななかで目指した「すべての町民の幸せ」が復興ビジョンとして形となっている。

国、県、町、そして町民。それぞれの役割の明確化

 浪江町は、一自治体の復興ビジョンとしては例外的に、国や県などの責任や役割についても記載した。原発事故の影響は被災地域に限ったものではない点や、国策として原子力発電を推進してきた経緯を言及。国は国土政策、制度や財源、賠償に関して、県は原発事故被災地における広域的な課題とニーズ把握や意見調整に関して、浪江町は町民の生活や文化、コミュニティの尊重に関して、それぞれの役割を明確化している。また問題解決に向け、互いに協力して取り組んでいく必要性が強調されている。

 そして、主役である町民一人ひとりの役割は、先人たちが大切に守り育んできたふるさとを再生させることとして記載された。事業者や行政の垣根を越えて協力し、主体的に復興に取り組むビジョンとなった。

秋の復興計画完成へむけ詳細設計へ

 浪江町では、今回策定されたビジョンや自由意見を含めた全てのアンケート結果を資料にまとめ、2万人近い全町民へ配布するという。必要経費も多額となるが、町民たちに皆が悩みながらも進めているプロセスを共有するとともに、それぞれの意見尊重する姿勢を伝える必要性は高い。

 また今後は、約4ヶ月かけて策定されたビジョンを、より具体的な計画へ落とし込み、秋の町議会での承認を目指す。ビジョンを策定した35名の委員会を拡大し、産業復興や住宅・インフラ整備といった5つ程度のセクターに分類した上でそれぞれ10人規模の部会をつくりながら新たなアクターを巻き込み、今一度住民の意見を吸い上げ計画を策定していく予定だ。

浪江町の復興ビジョンに盛り込まれた復興の目標と取り組み

浪江町復興ビジョン

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1件のコメント

  1. 友利長栄 返信

    先ず、お断りして置きます。詳細も把握しないでコメントを書くのは尊大な気がします。復興新聞さんの記事を見ますと、「地域住民主体のまちづくりを考える」では、工程を短期・中期・長期と三段階に分類して、業務内容を決めて居られます。私の見るところ、時間軸の決め方に大いに問題があると思います。また、業務内容が抽象的で具体性がない。多少の専門知識を持った方をメンバーを加えて、分科会をお作りに成られた方が良いと思います。

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