「10年後、人口減を止める 日本初の町を岩手から」菊池広人さん

菊池広人さん

菊池広人(きくちひろと)さん
特定非営利活動法人いわて連携復興センター事務局
特定非営利活動法人いわてNPO-NETサポート事務局長
盛岡市出身、早稲田大学卒。スポーツ関係のNPOを経て、06年岩手県にUターン。北上市のまちづくり事業に携わる。震災後は、大船渡市や大槌町、釜石市の仮設住宅支援員など、復興関連施策を推進する。

 いわて連携復興センター(以下、IFC)は昨年4月、「みやぎ連携復興センター」にならい各地域の活動を補完する広域的な中間支援組織として県内の中間支援NPOを中心に設立しました。

 岩手県は、震災前から年間1万人、1%ずつ人口が減少していた。その中で起きた震災でした。集落、さらには市町村の消滅を防ぐためには、元に戻すのではなく、新しく作るつもりで取り組む必要があります。

 人口が減れば税収も減るため、公共サービスの構造改革も必要です。公共サービスは必ずしも行政が提供するのではなく、地域住民の参画、協働が進めば、サービスの提供者と受益者がより近くなります。このことはより効果的、効率的な公共サービスの運用につながり、持続可能な社会につながっていくと考えます。たとえば、北上市では、震災前から、行政・民間・NPOが相談しながら事業を進めていく文化があり、この信頼関係をベースに、地域にとって一番いいコミュニティの仕組みを創るお手伝いをしてきました。

地域のためのビジネスを起こす

 今後、おおよそ小学校区単位でコミュニティビジネスや課題解決を行う仕組みが必要だと思います。地元で必要なサービスを地域の人が生み、地域の中で経済が循環する。そして、それだけでは足りない部分を「外貨」で稼ぐという考え方でできればと思います。

 例えば、大船渡市の全ての仮設団地に常駐で支援員さんが配置されています。コスト計算をすると、一世帯あたり月に1万円弱、年間10万円ほどでサービスが提供できる計算です。今は緊急雇用対策事業を活用していますが、本当に必要なサービスであれば、住民が自分で出せない金額ではない。ちょっといいマンションでは、共益費でより必要なサービスをしてくれる管理人さんがいるわけじゃないですか。

 北上市の黒岩地区、330戸、住人1000人くらいの地域では、住民がお金を集め、農協から施設を買い取りました。高齢者や独居の方に栄養価の高いものを食べてもらうために、配食サービスをしています。ただ、必要な数量は15個から30個で、収支が合わない。そこで、地元のレストランで食事を提供する、町内の事業所から弁当の注文を受けるなどして、50個くらいのロットにします。地域に軸があるので、協力してビジネスを成立させようとするんです。

 黒岩地区の隣の更木地区では、「外貨」を稼ぐために桑茶を販売しようと、地域の人で会社を起こしました。桑摘みの仕事は、岩手では高い時給700円。ただし、1人1日3時間しか働けない。おばちゃん、じいちゃん、ばあちゃんたちが、小遣い稼ぐべ、と。一人が多く働いていっぱい稼ぐのではなく、みんながちょっと豊かになる仕組みです。

 こうしたコミュニティビジネスの仕組みを創ることが持続的な良い地域社会につながります。いくつかの地域で優れた事例が出てきていますが、取り組みが遅れた地域をどう底上げするか、地域間の格差を減らすのかが、私たち、IFCや各地域の支援組織の仕事です。

持続可能な地域を創る

 今後の3年5年10年を考える上で大切なのは、自治。それから、「補完の原則」です。自分のことは自分で、地域のことは地域でする、そしてできないことを補完しあえるような体制。自分たちが住みたい地域は自分たちで創るのが一番です。

 来年の3月の段階で、市町村ごとにコミュニティ政策、ビジョンがある程度定まった上で地域づくりがスタートしているといいなと思います。長期的には、岩手県が日本の地方で初めて人口減少を止める県になることを一つの目標にしています。10年後の2021年までに。そうなったら私たちは「いわて連携復興センター」ではなくて「いわて連携センター」になるでしょう。

 もともと震災に関わらず、持続可能なまちをつくるのは絶対にしなければならないこと。岩手県の内陸部の人間として、また中間支援組織という立場での役割はその繋ぎ役や、仕組みをつくるお手伝いをすること。あくまで主役は地域です。

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