東北のいまvol.10「地産の間伐材を使って 全国に展開」フロンティアジャパン南三陸工場


 宮城県石巻市から三陸自動車道で北へ。先端の登米東和(とめとうわ)ICで降りると、今度は沿岸に向けて車を走らせる。

 南三陸町の市街地に入る手前を左折。しばらく行くと、丘の上に「入谷中(いりやちゅう)へようこそ」と看板のある、日に焼けて濃くなった木造の建物が目に入ってくる。間伐材エコグッズを作るフロンティアジャパンの南三陸工場はその2階にあった。

 工場といっても重機が並ぶそれではない。機械の類は、レーザーで木工切り出しを行うもの2台と、デザインを入力をするためのノートパソコンくらいで、2、3畳あれば収まる程度。別室の大きな作業台には、切り出された木製のノベルティと接着剤やグルーガンなどの工具が並び、パートで雇われた地元の女性たちが、切り出された木片を手作業で完成させている。過去に手がけたものは、団扇、ピンバッジ、本のしおり、キーホルダー、アロマブロックなど多岐に渡る。いずれも企業などがノベルティとして発注したものだ。

 フロンティアジャパンが、南三陸に工場を構えたのは2012年の3月。宮城県内の森林組合と震災前から取引があったこともあり、ツテをたどって工場の設立を申し出た。

 ここ南三陸工場で使うのは地産の杉材が中心。これを地元で商品化して全国に販売。世の中に必要とされるものを生み出し、それが認められることで、経済が周り、地元の雇用にもつながるという考えだ。これからの支援の形として、共益を生み出す考え方……CSV(Creating Shared Value)をめざしていきたいと代表の額賀泰尾さんは話す。取材の時点で、地元の方10名の雇用につながっているという。フロンティアジャパンが間伐材を仕入れることで、森林メンテナンスのための人件費を充当でき、さらに木を間引くことで陽が森に差し込み、森の生態系が保たれる期待もある。

 この日、彼女たちは陸前高田の一本松が刻印された丸いバッジのついたブックマークを作っていた。紙コップをひっくり返して底の窪みに接着剤を入れ、ヒモの先につけると、丸いバッジにくっつける。そのまま一呼吸間を置くと、机の上に並べていく。また、建物から少し離れたプレハブでは、ヒノキ材のアロマブロックを封入していた。企業ロゴの刻印されたアロマブロック……湯船につけるとヒノキが薫るというものだ。軽い木をたたく、コツコツとした音が鳴る。彼女たちは慣れた手つきで6つ取ると、網に入れる。それをビニールに封入し、封緘する。これを1日に1,000セット、全部で10,000セット作るという。「10日はかかるから、別の注文も来ちゃったら大忙しだね」と作業をしながら、彼女たちはからっと朗らかな声をあげた。

写真・文=岐部淳一郎

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