美味しい牡蠣を振る舞い、お世話になった恩返しを[笑顔の架け橋Rainbowプロジェクト]

01漁師のかき小屋
国道45線沿いの小高い場所にあり「大船渡おさかなセンター」に併設している「漁師のかき小屋」。
店内では看板メニューの「殻つき焼きかき食べ放題」をはじめ、地元の市場に水揚げされた「旬の魚介類の浜焼きセット」など新鮮な海の幸が味わえる人気のお店です。
人気の「殻つき焼きかき食べ放題」は「完全予約制」となっておりますのでご注意を。

振る舞う心も温まる「復興焼きそば」

赤いハチマキがトレードマークの新沼さん

赤いハチマキがトレードマークの新沼さん

「町を飲み込む津波を、ただ見ているしかなかった・・・」目を伏せ、少しうつむきながら語ってくださったのは、大船渡の飲食店「漁師のかき小屋」の新沼一也さん。
東日本を襲った津波により、お店のメイン素材である牡蠣は全滅。ライフラインも断たれ、窮地に立たされた新沼さんたち。仄暗い蝋燭の明かりのなか「これから生きるために何をしようか」と懸命に考えた末、唯一残された鉄板で焼きそばを作ることを思いついたそうです。
食材確保のため、内陸へ買い出しに行く先々で「どこからきたの?」と声をかけられることもあり「大船渡から来た」っていうと、みなさん親切にしてくださいました。なかには物資を分けてくださる方や、お風呂を貸してくださる方もいました。泣きながら帰りましたよ。改めて「日本っていいな」と思いました。と新沼さんは当時のことを赤裸々に語ってくれました。
たくさんの方々から支えられて販売にたどり着いた焼きそばを「復興焼きそば」と名付け、地域住民へ無料で配ったこともあったそうです。まだ温かい食べものが貴重だった当時は大変喜ばれたようです。

被災地の惨状と語り部としての思い

三陸産の大粒牡蠣を鉄板で豪快に

三陸産の大粒牡蠣を鉄板で豪快に

別名、海のミルクの名に相応しく潤沢で大粒の牡蠣がとれる大船渡湾。
「漁師のかき小屋」は、大粒の大船渡産の牡蠣をメインとした料理が自慢のお店です。
営業を再開すると同時に賑わいを取り戻しはじめた店内で、新沼さんは被災地の惨状を知ってもらうべく、語り部を希望されるお客さまに当時のことを話しています。
新沼さんは自分が体験したことのほかにも、特に被害の大きかった岩手県上閉伊郡大槌町、岩手県陸前高田市、宮城県本吉郡南三陸町のことを必ず話し、その話の壮絶さや、震災を通して見える絆に思わず涙するお客さまも少なくないそうです。
「大船渡の被災者もほかの被災地のことを考えている。自分のところより被害の大きかったところを心配して「何かしたい!!」と思っているのです」
多くの人に支えられ、再建を遂げた新沼さんたちだからこその思いが、身震いするような言葉となって私たちに伝わってきました。

支援してくださった、たくさんの人たちへ恩返し

おさかなセンター内(入口は右奥です)

おさかなセンター内(入口は右奥です)

震災翌年の2012年から牡蠣の提供を開始できるようになった新沼さんたちは、支援してくださった、たくさんの人たちへの恩返しにと、各地で行われるさまざまな復興支援イベントへ積極的に参加し続けています。
ある復興イベントでは「漁師のかき小屋」の牡蠣を食べようと並んだお客さまの行列が100m以上になるほどの盛況のなか、感謝の気持ちを込めながらお客さまに牡蠣を手渡したそうです。
「我々の頑張っている姿を見て頂いて、美味しいものを食べてもらえたら私は元気が出る」新沼さんは笑顔でそう言ってくれました。

牡蠣を使った料理がたくさん

牡蠣を使った料理がたくさん

2013年12月で「漁師のかき小屋」が本格的に営業再開をしてから丸一年が経ち、被災地の風景も復興に向けて着々と姿を変えています。「もしかしたら、まだ被災地に行ってはいけないと思っている方がいるかもしれませんが、それは間違いですよね。逆にどんどん来てほしい、それが地域の活性化につながると思っています」と語る新沼さん。
時折、遠くを見つめるような素振りをする横顔に「復興への道しるべ」が新沼さんの視線の先に真っ直ぐにどこまでも続いているようでした。


漁師のかき小屋
住所:岩手県大船渡市字砂子前1-1(大船渡おさかなセンター内)
電話:0192-26-4788
営業時間:11:00~14:00
定休日:水曜日
インタビューの模様はこちら → http://779.jp/sanriku_reports/1790/
URL:http://www.kakigoya.net/

記事提供:NTTdocomo「笑顔の架け橋Rainbowプロジェクト」