編集後記vol.29

あまロス、だった。連続テレビ小説「あまちゃん」を見るために起床時間を早め、毎日続きを楽しみに待っていた私は、10月以降、なんだかピリっとしない朝を過ごしていた。日本中で何百万人もの人が東北を舞台にした物語にハマり、(ドラマが11年3月11日を迎える)9月2日をドキドキしながら迎えたことだと思う。

誰かが言っていた。あまちゃんの視聴者はその日「東北の人たち」ではなく「夏ばっぱ」や「ユイちゃん」や「北鉄」がどうなるのかを心配していたのだ、と。「風化させるな」と言われるより、固有名詞で思い浮かべられる人や場所があることの方がずっと、心を動かす力が強いのだ。

いま、石巻から東京へ戻る列車の中でこの原稿を書いている。石巻で、女川で、地域をよくしようと取組む方たちにお会いした。人を育てる。生まれ育った場所を再生する。一〇〇年後の地域のために。彼らが語るのは、ドラマよりもずっとワクワクする、続きが楽しみで仕方ない物語だった。

事実は小説より奇なり。東北復興新聞を通じて固有名詞の「よきこと」「よきひと」を伝えたいと、改めて思う。東北で、日本で、世界で、多くの人が「○○町のあの方は元気だろうか」と思い浮かべ、つながるきっかけになれるように。(R)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です