他地域に学ぶvol.6 兵庫県 丹波市【前編】

丹波にしかないものは、何もない
人を呼び込み、活かす「場」の作り方

Iターン専用シェアハウス「みんなの家」

Iターン専用シェアハウス「みんなの家」

 2004年11月1日、兵庫県に新しい市が誕生した。氷上郡に属していた6町(氷上町、柏原町、青垣町、春日町、山南町、市島町)が合併し、新設された丹波市。人口約6万8千人のこの土地に、取り立てた観光資源や特筆すべき産業はない。日本の人口が減るのと歩調を合わせて少しずつ過疎化が進む、普通の「田舎」、典型的な中山間地域である。

 この地域で、まちの活性化に挑む人々がいる。彼らは何を武器に戦おうとしているのだろうか。

Iターン用シェアハウスで「経営塾」

 前川進介さんは大手化粧品会社を退職し、父親の興した会社を継ぐためにUターンした。前川さんが経営する株式会社みんなの村の商品に共通するのは、「田舎の課題を価値あるものに変える」ことだ。放置された山林の木を伐って製造した木酢液を皮膚疾患に効能のある入浴剤として販売する、個体数が増えすぎて農産物へ被害を出している鹿を狩猟し精肉・熟成させて販売する、など、地方ではよく耳にする課題を、価値のある商品やサービスに変えている。

 「丹波には名所もなく、丹波にしかないものは何もないんです。だから、自分たちで切り口を見つけて発信していかなければいけない。そのために、埋もれているものを宝だと思える視点が必要です。地域の課題を宝だと言える『よそ者』を、絶えず呼び込む必要があります」。

 よそ者を呼び込むために前川さんが始めたのが、シェアハウス「みんなの家」だ。きっかけは昨年暮れ。都市部のある人材をみんなの村にヘッドハンティングしていたが、Iターンしても住む家がないことに気がつき一軒家購入を決断。自分のために家を買うという福利厚生(?)に驚いた彼は、大手の内定を蹴ってみんなの村に転職することになった。

「みんなの家」家の掟 1人だったシェアハウスには、この7月に4人目の住人が入居する。しかし、前川さんは、「みんなの家」を単なる住居にするつもりもなければ、自然発生的に交流が生まれることを期待しているわけでもない。

 「住人には、町の課題を解決するスモールビジネスを興して欲しいんです。だから月に2回、ここで「経営塾」を開催しています。丹波の若手経営者が集まって、経営コンサルタントを講師に招き、3CやSWOTなどの現状分析や課題解決のためのと戦略を皆で考えます。だから、みんなの家には、市内の情報や課題が集まってくるし、オブザーブしている住人に経営感覚が身についていく。」狙い通り、早くもこの夏には住人のうち2人が起業する計画だ。建物を用意して終わり、ではなく、その場所が価値を持ち続けるための活動こそが、真に「場を作る」ことだといえるだろう。

 前川さんは元々まちづくりには興味がなく、会社の経営の方が面白かったという。だが、ある人物に巻き込まれ手伝ううちに、まちの課題を解決することにのめり込んでいった。その人物が、丹波市議会議員の横田親(いたる)さんだ。

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