企業による復興支援のこれからvol.2 現地との関係構築

復興庁が「結の場」開催 学びとつながりの創出

復興庁主催の「結の場」では企業と現地事業者のマッチングが行われた

復興庁主催の「結の場」では企業と現地事業者のマッチングが行われた

11月28日に石巻市の石巻商工会議所にて開催された「地域復興マッチング『結の場(ゆいのば)』」は、大手企業が持つ経営資源を糸口に、被災地域企業が自ら課題を解決するためのノウハウを学ぶ場となった。

当日参加した石巻市内の水産加工業者13社と支援に意欲的な大手企業ら35社は積極的な対話と熱い議論を交わし、地域活性化に新たな風を呼び込んだ。

議論の場では「地域復興は石巻ブランドなくして達成できない」「内部体制から見直す必要がある。伝統だけで経営はやっていけない」など、支援企業側からの鋭い意見に被災地域企業は、地域外から新しい視点を取り入れることが課題解決への一助となる、という気づきを得た。

宮城復興局の山本啓一朗氏は「真剣な議論の末に双方が歩み寄ることこそ、支援の壁を越える鍵となる」と、お互いが目線を合わせることの重要性を指摘する。

「結の場」で検討、共有された課題に基づいて、参加した支援企業から具体的な支援活動を今後提案していく。

山本氏は「両者の主張を聞き、条件を考慮した上でより効果的なマッチングを考えるのが私たちの役目。最終的な提案は最低でも5つを目指していきたい」と意気込みを語った。

被災地外企業からの提案提出は来年1月中旬を最終締め切りとする予定。2月上旬にマッチング成立企業と提案する事業内容を発表する。

第2回「結の場」は来年2月中旬に気仙沼にて開催予定。気仙沼商工会議所と水産流通部会が連携して、水産系企業をテーマに行われる。

キリンは支援の第2ステージ 6次産業化・リーダー育成へ

キリンは社員を毎週ボランティア派遣し、現地との絆を深めている

キリンは社員を毎週ボランティア派遣し、現地との絆を深めている

11年5月から「復興応援 キリン絆プロジェクト」として迅速かつ柔軟に現地のニーズに応えてきたキリングループ。これまで、農業においては、営農再開に向けた農業機械の支援、水産業においては、養殖再開に向けた養殖施設の復旧・整備支援などを続けてきた。

12月19日、同プロジェクトは、キリンビール株式会社を中心に13年から復興支援第2ステージをスタートさせると発表。「生産から食卓までの支援」をテーマにハードからソフトへ活動のウェイトを移し、継続的な支援を行う。水産業分野に約8億円、農業分野に約6・5億円の予算を取り、ブランド育成、6次産業化に向けた販路拡大、将来にわたる担い手・リーダー育成に2年間取り組むとした。

具体的内容に関しては現場ニーズと柔軟性を重視し、プロジェクト開始から関係を築いてきた公益社団法人日本フィランソロピー協会や、公益財団法人日本財団と協力して進め、農業においては、支援対象となる農業事業者の公募による支援も行う。

キリンが第2ステージへの移行を実現した背景には、これまでに構築してきた現地との関係がある。地域に密着した活動を基盤に、被災地支援についても現地の事業者や漁協・農協、支援団体などとの絆を深めてきたことが、確実に実を結んでいると言える。また、そのような取り組みに加え、石巻市の雄勝町立浜へグループ社員をボランティアとして派遣し続けている。

CSR推進部の小西弘晃氏は「未来につながる支援をおこなうためには、被災地域が求めているものを理解し、そのニーズに適応した支援を現地とともに考えて行うことが不可欠だと感じています」と語る。

キリンのように自社で行う場合も、「結の場」のようなマッチング・コーディネーションを活用する場合も、現地との関係性を構築することが、企業による被災地での社会的価値創造へつながっていく。

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