[提言]住宅再建のために支援制度周知のアドバイザーを

被災地ではいま、住宅再建が重要課題となっている。国・自治体・金融機関による支援制度は整備されてきたが、住民への認知と活用促進が課題だ。そのためには、住宅再建アドバイザーなどが、個別訪問(アウトリーチ)する必要がある。

住宅再建支援の概要

支援は大きく分けて(1)支援・助成金、(2)資金融資、(3)二重ローン減免、(4)税の減免の4つがある(図表参照)。

(1)支援・助成金制度には、国が行う被災者生活再建支援制度に加え、県や市町村ごとに独自に補助金を出している場合もある。例えば岩手県釜石市では、被災者生活再建支援制度と県の生活再建住宅支援事業費補助、釜石市が行う被災者住宅再建支援事業を活用することで最大500万円の補助を受けることが可能である。

(2)資金の融資では、住宅金融支援機構が実施する災害復興住宅融資が当初5年間の金利を0%としている。

その他、災害援護資金、生活復興支援資、母子寡婦福祉資金のように、所得や世帯状況に対応した制度も設けられている。

(3)二重ローン減免では、全国銀行協会や日本弁護士連合会などが「私的整理ガイドライン」を策定している。この制度の利点は、債務の減額・免除に加え、手元に最大で500万円まで残せることや、破産手続きとは異なり個人信用情報の登録などの不利益を回避できることなどにある。

最後に(4)税の減免では、新たに取得した土地や家屋の固定資産税等が軽減される。

住宅再建に関する支援制度

住民向け個別訪問の必要性

今後、仮設住宅に暮らす住民は、これらの制度の利用条件などを検討したうえで、住宅再建のシミュレーションを各家庭で行うことになる。そのためには各制度の周知、理解が重要となってくる。しかし、住民の理解が進んでいるとは言えないのが課題である。

たとえば私的整理ガイドラインに基づく債務整理の成立件数は、8月24日時点で東北全域で60件に留まっている。制度の存在を知り内容を理解している人は利用し、知らない人は、国や自治体の支援が十分ではないと誤解し、行政に対して不満を抱いているような状況とも言える。

行政は住民に対し、ホームページや広報、相談窓口を設けて制度の利活用を促進している。しかし、避難範囲が広範なため、一軒一軒回って戸別に説明するのは時間・人員ともに現実的ではない。

一方で、NPOや大学等の民間団体が住民向けに支援を行っている地域も少なくない。行政は、そうした支援団体の力を借りながら住民の皆さんへの個別訪問(アウトリーチ)を行うことが重要である。また、民間側も、行政と連携しながら各種の制度を理解した上で、各地において住民へのアドバイスを行い、自立再建を促していく必要があるだろう。

文/RCF復興支援チーム

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