大船渡市の雇用創出&地元住民主体型モデル【後編】

にぎわう集会所

人が集う空気づくり

大船渡仮設住宅

集会所の壁も賑やかに

 なかなか利用されず、支援物資置き場としての活用に留まっている例さえある仮設住宅地の集会所だが、大船渡では支援員が毎日の活動拠点として常駐することで、勤務時間帯は常に住民に解放できるようになった。これにより、誰もが気軽に立ち寄れる憩いの場、情報交換の場として、集会所に新たなにぎわいが生まれている。壁には各地から届いた応援の絵手紙や、さまざまな催しの報告が楽しい写真とともに貼り出され、ホール内には支援員と住民の明るい笑い声が響く。学校から帰った子供たちも立ち寄っていくなど、常に人が居る温かな「空気」がさらに人を引き寄せていると分かる。

 さらに、生活の中心に集会所があり、支援員が管理人の役割を発揮するこのモデルは、住民にとって防犯の面でも役割を果たす。大船渡市の要請により、仮設住宅地への来訪者の出入りは集会所にある「受付票」によって一括管理することに。集会所が仮設住宅団地の玄関として機能する形だ。これにより、当初住民の悩みの声として多くあがっていた、業者の戸別訪問や押し売り、悪質商法への不安も大きく軽減された。

問題解決で育まれる信頼

問題集約するコールセンター

大船渡仮設住宅

コールセンターは9月からの開設で対応のノウハウも かなり蓄積された

 市内で最も多い308戸が整備された猪川町・長洞団地の集会所には年中無休のコールセンターが設置された。専任スタッフ2名以上が常駐し、大船渡の全仮設住宅民と外部からの問い合わせを一手に受けつけ、行政機関や民間サービスにつなぐ等の対応を行う。雨漏りの修繕要請から生活の細かな相談まで、電話の内容は多岐に渡るが、マニュアル作成とノウハウ蓄積によって対応は徐々に効率的に。最近は住民側でもコールセンターに聞くべき内容か担当支援員に相談する内容か、切り分けが自然にできつつあり、運営がしやすくなってきているという。

大船渡支援員

運営をサポートする右腕派遣の成田さん(左)と、統括担当の新田さん(右)

 コールセンターでも解決が難しい問題が上がってくる場合も往々にしてある。それをサポートするのが、本事業の採用と管理を担当する人材派遣会社の社員であり、統括担当の新田恵市さんだ。新田さんは、住民同士の人間関係にまつわるような複雑な問題でも、個々の感情に寄り添いながら時間をかけて解決していく。もう1人のサポート役はNPO法人・ETIC.の「右腕募集」で派遣された成田好孝さん。東京でプロジェクトマネージャーとして働いてきた経験を生かし、全体を見ながら問題の再発防止や仕組みとしての解決に取り組む。2週間に一度、県、市の職員、社協、警察、ボランティアセンター、NPO代表で集まる情報共有会を運営し、根本的問題についてはそこで解決の糸口探すことも。成田さんは「自分がいなくなっても全ての業務と問題解決を現地の人々で行えるように」と常に裏方に徹するよう心がけながら奔走する。

 あくまで地元住民を主役に「つながりとなりわいの再生」を目指す大船渡の仮設住宅運営。現在は各集会所へのパソコン設置も完了し、段階的に実施してきた支援員へのパソコン研修によって迅速な情報共有が可能になった。住民がインターネットを利用できる環境も整った。今後は、外部からのイベント支援に加え、住民主体の催しの積極的開催や、自治会設立、会報の作成などを通じて、各団地内のより豊かなコミュニティ醸成を目指していく。

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