ついにオープンのMORIUMIUS徹底解剖① 「昔の暮らし」体験施設のすべて

 小富士山を背に、雄勝の森と海に囲まれた複合体験施設MORIUMIUS(モリウミアス)。屋根を覆っているのは、硯石(すずりいし)のスレートで、雄勝の天然の硬質粘板岩だ。その濃淡豊かな色合いは、建物に独特のぬくもりある表情を与えている。

 1923年に設立され2002年に閉校となった旧桑浜小学校は、約2年かけて参加者の手で改修され、2015年7月にMORIUMIUSとしてオープン。夏から秋にかけて子どもたちを対象とした長期・短期の滞在型プログラムを提供していく。運営する公益社団法人sweet treat 311の理事であり、MORIUMIUSフィールドディレクターを務める油井元太郎さんは、「ここはすべてが子ども目線。難しい定義より、朝起きてから日が暮れるまでの『昔の暮らし』をまず楽しんでもらえたら」と話す。MORIUMIUSののれんが揺れる正面入口から施設をめぐり、写真とともにその魅力を紹介していきたい。

建物中央に掛かる、旧校舎時代からの時計。その下をくぐって右手すぐがフロントだ。

建物中央に掛かる、旧校舎時代からの時計。その下をくぐって右手すぐがフロントだ。

窓口はルームインルームになっており、テーブルや椅子も配されている。壁にあしらわれているのは、やはり硯石のスレートだ。

窓口はルームインルームになっており、テーブルや椅子も配されている。壁にあしらわれているのは、やはり硯石のスレートだ。

玄関真上の2階には、小学校時代には校長先生の部屋として使用されていた空間があり、ここはラウンジとして生まれ変わった。今後本棚も入れる予定で、親子で読書をして過ごせるような少し落ち着いた場所となっている。

玄関真上の2階には、小学校時代には校長先生の部屋として使用されていた空間があり、ここはラウンジとして生まれ変わった。今後本棚も入れる予定で、親子で読書をして過ごせるような少し落ち着いた場所となっている。

フロントから廊下に出ると、黒板にはMORIUMIUSで働くスタッフの紹介や、子どもたちが滞在期間中に調べた地元の情報などが共有されるべく貼り出されている。取材時に貼られていたのは、滞在した小学生、ゆきひさ君のインタビュー問答集。例えば、地元漁師の永沼さんとのやりとり。「Q. 友だちなんにんいるんですか?」「A. ぜんいん」。ゆきひさ君が撮影したひとり一人の笑顔の写真を眺めていると、つられてこちらも微笑んでしまう。

フロントから廊下に出ると、黒板にはMORIUMIUSで働くスタッフの紹介や、子どもたちが滞在期間中に調べた地元の情報などが共有されるべく貼り出されている。取材時に貼られていたのは、滞在した小学生、ゆきひさ君のインタビュー問答集。例えば、地元漁師の永沼さんとのやりとり。「Q. 友だちなんにんいるんですか?」「A. ぜんいん」。ゆきひさ君が撮影したひとり一人の笑顔の写真を眺めていると、つられてこちらも微笑んでしまう。

黒板の前には、廊下をはさんで子ども部屋が2部屋。それぞれ2段ベッドが設置され、1部屋あたり22人が寝泊まりすることができる。廊下の壁は取り外してあるため、夏はドアを開け放てば風が吹き抜けて過ごしやすい。

黒板の前には、廊下をはさんで子ども部屋が2部屋。それぞれ2段ベッドが設置され、1部屋あたり22人が寝泊まりすることができる。廊下の壁は取り外してあるため、夏はドアを開け放てば風が吹き抜けて過ごしやすい。

また、校庭側の大きなガラス窓越しには、水田とビオトープが外に見える。「これはパーマカルチャーデザイナーの四井真治さんによって水面に反射した光が部屋の中に入るようにと計算して設計されている。こういう知恵は、きっと昔の人たちにとっては当たり前のことだったんじゃないかと思う」。自然の力を借りれば、暖房や照明にできるだけ頼らずに過ごすことができるのだと油井さんは話す。

また、校庭側の大きなガラス窓越しには、水田とビオトープが外に見える。「これはパーマカルチャーデザイナーの四井真治さんによって水面に反射した光が部屋の中に入るようにと計算して設計されている。こういう知恵は、きっと昔の人たちにとっては当たり前のことだったんじゃないかと思う」。自然の力を借りれば、暖房や照明にできるだけ頼らずに過ごすことができるのだと油井さんは話す。

子供部屋の廊下側の窓ガラスには、ガラスペイントのマーカーで絵が描かれていた。これは子どもたちが暇な時間にガラスをキャンバスに落書きできるようにしているのだとか。部屋のなかには、子どもたちが自由につくった硯工芸作品も置いてあった。

子供部屋の廊下側の窓ガラスには、ガラスペイントのマーカーで絵が描かれていた。これは子どもたちが暇な時間にガラスをキャンバスに落書きできるようにしているのだとか。部屋のなかには、子どもたちが自由につくった硯工芸作品も置いてあった。

滞在する子どもたちは、朝から地元漁師の船に乗り、まず食材を求め漁業体験へと向かう。養殖漁業が盛んな雄勝の海では、ホタテやホヤ、牡蠣、銀鮭、ワカメなどが豊富に獲れる。ではなぜ雄勝の海は豊かなのか。それは山と海が近く、雨で山に入った水は大量に海に注ぎ込み、海水の塩分濃度が低くなる代わりにミネラルがとても豊富になるから。そんな雄勝の水の循環や、生態系にかかわる話は、入口を背にして子ども部屋のさらに奥にある、半屋外の空間で行われるという。ここにも黒板が設置されており、説明用のパネルが用意されている。

滞在する子どもたちは、朝から地元漁師の船に乗り、まず食材を求め漁業体験へと向かう。養殖漁業が盛んな雄勝の海では、ホタテやホヤ、牡蠣、銀鮭、ワカメなどが豊富に獲れる。ではなぜ雄勝の海は豊かなのか。それは山と海が近く、雨で山に入った水は大量に海に注ぎ込み、海水の塩分濃度が低くなる代わりにミネラルがとても豊富になるから。そんな雄勝の水の循環や、生態系にかかわる話は、入口を背にして子ども部屋のさらに奥にある、半屋外の空間で行われるという。ここにも黒板が設置されており、説明用のパネルが用意されている。

新鮮な魚介類を確保したら、そのままさばいて食べたり、持ち帰って自分たちで調理したり。調理場となるのは屋外の「ガーデンキッチン」だ。かまどは日干しレンガでつくられており、ごはんを炊くのはなんと羽釜。ピザ専用のピザ窯まである。野菜や魚を洗ったりさばいたりするための流しもあり、この表面に使用されているのはやはり地元の雄勝石。水は沢筋に設置された取水枡から引かれる、新鮮な山水だ。

新鮮な魚介類を確保したら、そのままさばいて食べたり、持ち帰って自分たちで調理したり。調理場となるのは屋外の「ガーデンキッチン」だ。かまどは日干しレンガでつくられており、ごはんを炊くのはなんと羽釜。ピザ専用のピザ窯まである。野菜や魚を洗ったりさばいたりするための流しもあり、この表面に使用されているのはやはり地元の雄勝石。水は沢筋に設置された取水枡から引かれる、新鮮な山水だ。

食事をとるのは玄関口左手にあるダイニング。さらにその左の部屋には木工部の工房が。山から切り出してきた間伐材を加工して、お皿やコップ、テーブルや家具などもここで作ることができる。「子どもたちには、滞在期間中に最低でも自分が使うお箸はここでつくってもらう」と油井さん。

食事をとるのは玄関口左手にあるダイニング。さらにその左の部屋には木工部の工房が。山から切り出してきた間伐材を加工して、お皿やコップ、テーブルや家具などもここで作ることができる。「子どもたちには、滞在期間中に最低でも自分が使うお箸はここでつくってもらう」と油井さん。

それからお風呂。新しく校舎の脇に建てられた円形の入浴場も、やはり自然素材にこだわっている。校庭側は土壁で、大浜地区の粘土に藁を混ぜて発酵させ、ボランティアの手作業中心で塗り上げられた。山側の外壁には、裏山と熊沢地区の300本の竹が切り出され、あぶって油を抜いたうえで使用。床も雄勝の硯石が敷き詰められている。「ここはなんとなく地産地消のお風呂」と油井さん。10人風呂と5人風呂の2つがあり、男女比によって使い分ける。「夜は満天の星空で、秋は紅葉が見える。お湯はウッドボイラーで沸かしているので、湯あたりがやわらかくて気持ちいい」そうだ。

それからお風呂。新しく校舎の脇に建てられた円形の入浴場も、やはり自然素材にこだわっている。校庭側は土壁で、大浜地区の粘土に藁を混ぜて発酵させ、ボランティアの手作業中心で塗り上げられた。山側の外壁には、裏山と熊沢地区の300本の竹が切り出され、あぶって油を抜いたうえで使用。床も雄勝の硯石が敷き詰められている。「ここはなんとなく地産地消のお風呂」と油井さん。10人風呂と5人風呂の2つがあり、男女比によって使い分ける。「夜は満天の星空で、秋は紅葉が見える。お湯はウッドボイラーで沸かしているので、湯あたりがやわらかくて気持ちいい」そうだ。

ウッドボイラーに使う木の薪割りは宿泊者の体験プログラムのひとつでもある。薪を3時間ほど焼べ続けるとお湯の温度は100度以上になるので、冬場は湯を沸かすときに生じる温風を建物内に流せるよう、床下にパイプを通しているそうだ。

ウッドボイラーに使う木の薪割りは宿泊者の体験プログラムのひとつでもある。薪を3時間ほど焼べ続けるとお湯の温度は100度以上になるので、冬場は湯を沸かすときに生じる温風を建物内に流せるよう、床下にパイプを通しているそうだ。

校舎の裏にはなんと豚舎もあり、現在5頭の豚が飼育されている(残念ながら撮影時はお昼寝中)。これは宮城県名取市で被災した「有難豚(ありがとん)」の種豚から血を分けている豚たちだ。食用の豚は生後約半年で肉豚として出荷されることになるが、この有難豚を飼育する養豚農家は、豚がその半年をいかにしあわせに生きるかという「アニマルウェルフェア」の考え方を重視。豚たちが半年間をストレスなく過ごせるよう、望ましい環境があれば預けるという試みを行っているそうだ。豚の世話を通して、ここではいのちをいただく暮らしについても、直接学ぶことができる。

校舎の裏にはなんと豚舎もあり、現在5頭の豚が飼育されている(残念ながら撮影時はお昼寝中)。これは宮城県名取市で被災した「有難豚(ありがとん)」の種豚から血を分けている豚たちだ。食用の豚は生後約半年で肉豚として出荷されることになるが、この有難豚を飼育する養豚農家は、豚がその半年をいかにしあわせに生きるかという「アニマルウェルフェア」の考え方を重視。豚たちが半年間をストレスなく過ごせるよう、望ましい環境があれば預けるという試みを行っているそうだ。豚の世話を通して、ここではいのちをいただく暮らしについても、直接学ぶことができる。

MORIUMIUSでは、私たちが海や山、生きものたちから恵みを受けながら生活していることを知り、その昔ながらの暮らしを実際に体験してみることができる。そしてこの施設には、地元の人や地域の文化に触れながらそれらを体験するための工夫が満載なのだ。

しかしこのような施設は、一体どうすればつくりあげることができるのか?後編では、延べ5000人ほどを引きつけたMORIUMIUSの魅力、そんな人の循環が出来上がっていった舞台裏を探る。

文/井上瑶子