ふくしまを生きるvol.1 避難できない子供に寄り添う「保養」活動

福島のために誰でもできること、それは「忘れない」ことです、と話す「子ども福島」の吉野さん。

福島県では、震災と原発事故によって県外に避難をしている県民が6万人を超える。県は人口の流出を食い止めようと除染を最優先の課題として取り組んでいるが、いまだ原発事故は収束しておらず、放射線量も高い数値を示し続けている(2月2日現在、福島市0.65マイクロシーベルト/時。東京都新宿区は0.085マイクロシーベルト/時)。

被災者の生活相談を行なっている「ふみだす生活サポートセンター」(※)には、震災から11ヶ月経った今でも避難についての問い合わせが寄せられる。全相談の7割弱を避難関係が占め、相談者のほとんどが、子供を持つ母親や祖母にあたる女性たち。内容は「子供の健康を考えると、福島に住み続けることに不安を感じる。避難したほうがいいのか」、「これからでも避難できる地域、サポートなどはあるか」といったものだ。

同センターでは、最終判断は本人に委ねるスタンスのうえで、避難を希望する人に避難先の住居や生活情報の提供を行なっているが、そのニーズに十分に応えるのは容易ではない。借り上げ住宅などの公的支援を終了する県外の自治体が増えてきているからだ。

「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク(略称:子ども福島)」で避難・疎開・保養を担当する吉野裕之さんは、こう話す。

「事故後すぐに避難できたのは、比較的、条件に恵まれていた人たち。避難先の確保に加えて、経済状態や子供の就学・親の就業状況などがポイントになるが、それらの条件が揃わない人々は、不安や迷いを抱えながらもここで生活せざるを得ない」。

福島で暮らし続けるそのような親子のために「子ども福島」では現在、週末や休暇を利用しての「保養」サポートに重点をおいている。

「短期間でも放射線量の低い地域で過ごすことで、心も身体も楽になる。避難できない子供たちにとって、『保養』は有効なプログラムです」と吉野さん。受け入れ団体・地域も各地にでき、新しいネットワークができつつあるという。

「復興」の掛け声が高まる一方で、まだ被害が続いているという福島の現実。だが、変化するニーズに対応した市民レベルの動きが広がっていることは一つの希望といえるかもしれない。

※運営・ふくしま連携復興センター、委託元・東日本大震災復興支援財団。福島市太田町。TEL024(573)2731

(取材・文/ふくしま連携復興センター・遠藤 惠)

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