2020年に震災復興祈念館を 福島を「知る」「感じる」「考える」Think Fukushimaるるる始動!

福島市に拠点をおくNPO法人ふくしま新文化創造委員会は、2015年4月11日、同市内にあるチャンネルスクエアで震災復興祈念館準備イベント「Think Fukushima るるるvol-1」を開催した。「るるる」とは「震災の記憶と、現在の状況を正しく【知る】」「after3.11の文化的表現について喜怒哀楽をテーマに分類し、それらを【感じる】」「多様な福島の問題を、きっかけを提示し、みんなで【考える】」という3つの「る」をあわせたものだ。

菅野瑞穂氏

トークゲストの菅野瑞穂氏

代表理事の佐藤健太氏による挨拶のあと、40人の来場者を前に「るるる」フレンズの一人であり、福島県二本松市東和地域で有機農業を営む(株)きぼうのたねカンパニー代表、菅野瑞穂氏がトークゲストとして登場。「種をまくことは、命をつなぐこと」をモットーに震災後に活動してきた農業体験ツアーや自身が営む有機農業を通して「人間社会と自然とをつなぐ」ことについて語った。

1杯のごはんワークショップの様子

1杯のごはんワークショップの様子

菅野氏の講演後は、希望者が集まり「るるる」の「考える」コンテンツの一つ、「1杯のごはん」ワークショップを体験した。現在福島県では米の安全安心を確保するために、県産の玄米すべての放射性物質のスクリーニング検査を実施している。その米を題材にして、農業従事者、小さな子どもを持つ主婦、小学生など、年齢・性別・職業の違う登場人物を設定。参加者は、それぞれ自分が引き当てたカードに書かれた人物になりきって、福島県産の「1杯のごはん」について思うことを話す。その後、自分自身だったらどうするかをグループで共有する。違う立場の人になりきることで、他者の気持ちを理解するのが目的で、まだ試作段階だそうだが、可能性を感じるコンテンツである。

このほか会場には「るるる」の「知る」コンテンツとして、福島第一原子力発電所事故後の調査年表が貼られ、当時ニュースでよく目にしたタイベックススーツも展示した。トークショーのゲストの話を元に作る年表のほか、オススメのDVDや本もそろえていく。このように展示品を見て、実際に試してみて、「感じる」コンテンツを増やしていきたいとメンバーは考えている。

オープニングの様子。右が代表理事の佐藤氏

オープニングの様子。右が代表理事の佐藤氏

NPO法人ふくしま新文化創造委員会は、福島市に震災のことを学ぶ震災復興祈念館が欲しいと考えてきた。3.11の出来事を、後世に残していける場所である。広島市には広島平和記念資料館がある。水俣市には水俣病資料館がある。外部から訪れた人は、資料館で原爆被害者や水俣病患者のことを知り、感じ、考える。同様に福島市を訪れる人が祈念館に立ち寄ることで、福島県で起きたことを「知る」「感じる」「考える」きっかけにしてもらいたい。できれば東京オリンピックが開催される2020年までに完成させ、国内外から訪れる多くの人に東北へ足を運んでもらいたい。その第一歩として今年度は、毎月11日に福島出身の実践者や研究者、著名人などを招き、福島県のひいては日本の課題を見つけていく予定だ。今回のイベントはその第1回目として開催されたのである。

ある程度コンテンツが集まった段階で、今後、コンテンツの貸し出しも検討していく。関心があっても福島県に来ることができない人たちのために、全国でイベントを開催していきたい。その出店料は震災復興祈念館設立資金として積み立てていく予定だ。また一緒に活動していく仲間「るるる」フレンズも募集している。

「ふくしまの出来事」を伝える手段としては、すでに県内各地でアーカイブが作成されている。しかし県庁所在地である福島市に震災復興祈念館をつくることで、新たな交流人口が生まれるのではないだろうか。たとえば福島市を修学旅行先に選び、祈念館を見たあとに、市内にあるいくつかの有名温泉地に宿泊する。さらに福島市周辺の観光地を巡る。このことが会津若松市を中心とした従来の観光の流れとは別の観光資源につながるかもしれない。行政主体ではなく、民間先導型であることを活かした柔軟な取り組みに期待したい。

文/武田よしえ