企業を巻き込み被災者らの「悲嘆のケア」を 岡田武史氏、水谷修氏らが新法人

一般社団法人グリーフケアパートナー(以下、グリーフケアパートナー)が設立され、3月3日、設立記者会見が開催された。
「グリーフケア」とは、死別をはじめ人生における大きな喪失によって起こる「悲嘆」を抱える人に寄り添い、ケアすること。上智大学特任教授・上智大学グリーフケア研究所所長として、阪神淡路大震災、附属池田小学校児童殺傷事件、JR福知山線脱線事故の被害者や遺族の心のケアに携わってきた髙木慶子理事が「企業とグリーフケアを結びたい」と法人設立を発案。サッカー日本代表元監督で今治FCオーナーの岡田武史氏、「夜回り先生」として23万人以上の子どもたちの支援を行う水谷修氏らが理事に加わり、活動をスタートした。

記者会見に出席した、(左から)岡田理事、髙木理事、山下達美代表理事、水谷理事

記者会見に出席した、(左から)岡田理事、髙木理事、山下達美代表理事、水谷理事

今後、事故や災害等による喪失体験を持つ人への支援、現役を引退したスポーツ選手の喪失体験の支援に加え、企業・一般向けの講演を開催しグリーフケアに対する認知、理解を求めていく。
また、パートナー企業を募り、その従業員の心身の負担を軽減するための活動を行うほか、パートナー企業とともに支援活動を行うことを視野に入れている。水谷理事は「日本で初めて、企業と一緒に、支援が必要な人へのセーフティネットを張る取り組み」と意気込む。

グリーフケアパートナーでは東日本大震災からの復興支援活動にも力を入れるとしており、高木理事が3月22日から24日まで大船渡市を訪れる予定。高木理事は「コミュニティの仲間づくりの支援などを、具体的かつ頻繁に行っていきたい」、水谷理事は「まずは被災地のみなさんの要望を聞きたい」という。

会見後の鼎談で水谷理事は、「子どもも引退したスポーツ選手も『心のケア』『頭のケア=キャリア観の醸成』『身体のケア=生活の保障』の3つの支援が必要。トータルに取り組むことで、生きていくためのケア、社会人としての自立支援の基盤になりたい」と語った。高木理事は「問題解決では人の心は晴れない。まずは寄り添い、『あなたは何をしたい?』と問いかけ、そのために何が必要かを一緒に考える。今からの社会は、1人1人を大事にすることが重要」、岡田理事は「わずかな悲嘆に気づいて相手の気持ちになって考えることが、これからの社会には必要。資本主義が行き詰まりを見せる中、枠組みでは変わらない。変えていくのは信頼など、目に見えない資本だと考えている」と、グリーフケアの理念が今後の社会に必要とされる可能性を示唆した。

東日本大震災の被災地では、各地で新たなまちづくりが進む中、親族や友人、やふるさとを失った悲嘆を抱えたまま過ごす人も依然として多く存在する。
強力な専門家集団が、現地で活動を続ける団体や住民と協働し、被災者のケアと新たな社会づくりに力を発揮することを望む。

文/畔柳理恵