楽しいほうを選ぶ。 -映像監督になった女子高生-[3.11がくれた夢〜東北を変える高校生たちのアクション〜]

mishina maasa

つーる・ど・とうほく

彼女と出会ったのはスマートフォンの画面の中だった。

2013年11月4日、Facebookで友達からシェアされてきたURLをクリックした。「ラブ♡セン〜ツール・ド・東北 高校生ver.〜」。先日、宮城県立多賀城高校を卒業した三品万麻紗さんが「つーるどとうほくっ♪」というメロディと共に自転車で東北をまわり、岩手、宮城、福島の様々な地域の高校生たちと共に地元愛を宣言するという動画だ。

この動画は僕にとって、TOMODACHIプログラムのアメリカ留学に申し込むきっかけや、この記事を書くきっかけになったとても大切な作品だ。初めてこの動画を見たころは、僕は早く都会に行きたいと思っていたし、中途半端に都会で途中半端に田舎みたいな自分の故郷はワクワクすることがなくて、正直そんなに好きじゃなかった。でもこの動画に登場していた高校生たちは「地元が大好きです!」って心からの笑顔で宣言して、仲間と共に楽しそうに動画に映っていた。

それが、すごく衝撃的だった。高校生が盛り上がる話題と言えば恋愛とか、人気のアイドルとか、スマホのゲームとかそんなのだと思っていたし、自分も同年代の高校生と地元の話なんてしたことがなかった。だから「地元が好きだ」っていう話題でこんなにも笑顔になれて、ここまで一生懸命になれることにすごく驚いた。そして彼らは僕が今まで会ったどの高校生よりも「キラキラ」していて、それもとても羨ましかった。

楽しそうな大人たち

中学生の時、父親の仕事の都合で引っ越しの多かった彼女は学校に馴染めず、辛い毎日を送っていた。学校の先生もほとんど気づいて助けてはくれなかった。そんな状況にあった彼女を救ってくれたのは地元の映画館に偶然見に行った映画「花より男子ファイナル」だった。

「あの映画を見たとき、なんていうか今までにないドキドキを感じたんです。私の分野ってここなんじゃないかなって思って、好きになんなきゃいけないんじゃないかなって直感で思ったんです。」

辛くて仕方がなかったけど、こんなに好きになれるものがあるんだったら、へこたれてる場合なんかじゃないと思った。

その後、花より男子のDVDボックスも購入し夢中になってを見ていた。「その頃は、なんだか周りにいた大人の人たちの働く姿が楽しそうには見えませんでした。だから、自分もそんな楽しくない大人になっちゃうのかなぁ、って怖かったんです。」そんな彼女は本編以上に、DVDに付いていたメイキングの映像に特に目を惹かれた。「メイキングにはものすごく楽しそうに、作品を撮ってるスタッフの方たちが映っていて、なんでこの大人の人たちこんなに楽しそうなんだろう?私もこんな風に楽しみたい!!って思いました。学校は毎日辛かったし、将来の自分に不安もあったけど、メイキングを見て、私もきっと楽しめるんだって安心したんです。」

メイキングに映っていた楽しそうに映画を撮る大人の姿。
彼らとの出会いから、彼女は「映像」という世界で夢を追いかけることに決めた。

監督になった女子高生

高校に入学した彼女は高校生活に「違和感」を感じていた。「色んな分野に興味があったけど、高校では学びたいことを学べなくて、なんだかすごく狭い世界だなぁって思っていました。入学して3日目だったけど来る高校間違えたかな、って。でも今考えると、部活動を通してリーダーシップを学ぶことができたし、先生方と放課後遅くまで語り合って、色んな分野の人と関わるための力も身につけることが出来ました。だから最終的にはすごく感謝していて、最高の3年間だったって思ってます。」

そんな彼女は高校1年生、2年生の夏休みにTOMODACHIのプログラムで2度アメリカに渡った。このプログラムとの出会いが彼女の高校で感じていた違和感を少しずつ「ワクワク」に変え、夢への想いを加速させていくことになる。

2回目の渡航。プログラムのPRのための動画を撮影に来ていた映像制作会社 前田屋のスタッフと出会った。前田屋のスタッフと彼女は、映像という共通の軸ですっかり意気投合し、プログラム中、夜遅くまで映像についてや、彼女の撮った写真について語り合った。

日本に帰国後の2013年9月、東京で行われたプログラムの報告会の夜に前田屋の代表である 前田さんと食事をした。「その時、『ツール・ド・東北』というイベントのために東北の高校生をテーマにした作品を作ってみないか、というお話をいただいたんです。」

少し迷った彼女だったが、答えはイエス。

彼女は「監督」になった。

楽しい方を選べ

TOMOTRA

監督と呼ばれるようになってから2ヶ月。東北をまわり、TOMODACHIプログラムで出会った仲間たちと一緒に撮影を重ねて来た。どんな作品になったかは是非自分の目で作品を見て欲しい。「見る人によって感じ方は全然違う」いつであったか、彼女は語っていた。

ここで作品が完成して約2ヶ月後の彼女のFacebookへの投稿を引用したい。

私は、11月。校長先生の元へ 「閉講式、私に13分時間をください。」
それから、1ヶ月後。全校生徒の前で、東北の高校生の地元愛と私が今、大事にしていることについてのプレゼンをしました。
「みなさん、こんにちは。」というまで、自分は何をしているのだろうと。正直よく分かっていなかったのですが。
式が終わった後、いたるところから「つーるどとうほくっ♪」というメロディを口ずさむのを聞いて、ようやく、自分が何をしたのかを理解しました。
自分の高校が退屈で仕方がなかったために、外へ出た私。外に逃げるだけではなく、しっかり自分がいる場所で何かをしなければ。
「将来の夢諦めていたけど、やっぱり頑張ろう!って決めたよ!!!」とメールをもらったり、わざわざ教室まで来て頂いて、「ありがとう!本当にありがとう!」とドラマのワンシーンのようなメッセージを頂いたり、、、自分の学校にしっかり向き合えたんだなと。
全校生徒の皆さんのおかげで、逃げていた事と向き合えました。
本当に貴重な時間をありがとうございました。

(※編集部注 原文ママ)

「楽しいほうを選べ」。彼女の師匠である、前田博隆さんの言葉だ。彼女は目の前に分かれ道が現れるたび、これにしたがって進んで来た。
ラブセンに映っているのは「好きなこと」で地元のために何かをしたいとアクションを起こしてきた高校生たちだ。ツアーも、インターネット番組も、音楽も、野球も。そしてもちろん彼女にとっての「映像」も。
地元への貢献の方法は無数にある。でも、まずは自分が楽しまなきゃきっとダメだ。「やらなきゃいけない」の嫌々の気持ちじゃきっといいものなんてできないし、すぐに飽きてしまう。「やりたい!」という熱い想いを持って、自分の好きなことを一生懸命に楽しみながらやればきっといいものが出来る。そんなメッセージもラブ♡センからは受け取った。
高校に違和感を感じ、学校を飛び出した彼女は「楽しいほう」を選び続け、また学校に戻ってきた。自分が大好きな東北の高校生たちと一緒に作った作品で一番近くの友達たちに「きっかけ」を届けたかった。
「ラブ♡セン〜ツール・ド・東北 高校生ver.〜」はFacebookやTwitterで今もなおシェアされ続けている。本来出会うはずのなかった東北じゅうの高校生が、震災をきっかけに出会い、アクションを起こした。その姿は後輩たちに「憧れ」と「きっかけ」を生み出し、また新たなアクションへと繋がっている。
「中学校の時、先生に『映像の仕事に就きたい』って話したら『それはお前がただ好きなだけだろ、もっと社会に貢献することを考えなさい』と言われて、それにすごくすごく違和感を感じていました。

社会問題ってたくさんあるじゃないですか。だから私がそのすべてを解決できないっていうか、全部は解決しなくていいっていうか。色んな世界や、沢山の社会問題と出会う中でそう気づいてからは『自分のために生きて良いんだ』って思うようになりました。もちろん誰かに「きっかけ」を届けたいっていう想いはすごくすごくありますよ!

自分にきっかけをくれた大人たちが「好きなことにたっぷり愛情をかけて、すごく楽しそうにやりながら、幸せそうに生きている人たちだったから、自分もそんな風に生きて周りにも良い影響を与えて、そんなカタチで「社会貢献」したいって思ってます。

“楽しいほう”を選んで生きていきたいです!」

「楽しいほうを選ぶこと」はきっと「逃げること」とは違うのだと思う。学校に戻ってそれを証明した彼女は誰かを幸せにしながらこれからも「好きなこと」で幸せに生きていく。

彼女は、映画から沢山のきっかけをもらった。しかし、映画の作り手は「三品万麻紗にこう感じてほしい。」と考えながら作品を作っているわけではないだろう。映画たちは作り手の知らないところで、沢山の人の人生を「知らぬ間に変える」可能性を持っている。いつも、どんなところにでも足を運び、数えきれない人たちと出会ってきた彼女は「出来ることなら世界中のすべての人に会いたい。」と言っていた。現実的に考えると難しいかもしれないが、映画だったらその夢に少し、近づけるかもしれない。

今日もきっと、彼女の知らぬ間に、彼女の知らない誰かが、彼女の映像作品を見て、人生を変えるきっかけをもらっている。

彼女の代わりに彼女の映像作品が世界中の人と出会ってくれる。

「映像」とは彼女にとってそんな存在なのだと思う。

文/西村亮哉 福島県立安積高校在学中