福島県川内村・双葉町、宮城県女川町へ派遣[日本財団 WORK FOR 東北]

「WORK FOR 東北」は、被災地の自治体等への民間企業による社員派遣、個人による就業を支援し、人材の面から復興を後押しするプロジェクトです。
復興の現場に社員を派遣している企業、および、赴任した方々のインタビューを紹介します。

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2014年4月よりTOTO株式会社から東北各地に派遣される3名の社員の方々に思いお聞きしました。

思いを行動に移すチャンスをもらった
福島県川内村へ派遣予定の安永文子さん

派遣先の川内村商工会、川内村役場の方々と安永さん(中央)

派遣先の川内村商工会、川内村役場の方々と安永さん(中央)

Q:今回、社内公募に応募した経緯を教えてください
A:東北の復興については、元々継続的な支援活動をしたいという思いがありながら、なかなか実現できずにいました。今回の派遣は在籍して腰を据えながら、しっかり復興支援に関われるのが魅力的でしたし、派遣開始まで引き継ぎの時間も持てる。社内研修をきっかけに改めて人生を振り返ったタイミングでもあり、是非このチャンスを活かしたいと想い応募にいたりました。

A:今までどのような仕事に携わってきましたか?
Q:ずっと宇都宮の営業所にいました。営業所は、お客様の担当が細かく分かれておらず、一般のお客様から工務店などお客様など様々いらっしゃいますので、オールマイティな対応力が求められます。お客様が役所と住宅会社ではPR方法も時期も違う。仕事の内容では、TOTOの1次店パートナー様・販売店・元請様、お客様をまわるルート営業が一番多いです。
 その他、リモデルクラブ店という、住まいのリフォームを事業にしている店舗が全国にあるのですが、その店舗アドバイザーもしています。

Q:派遣予定である川内村に行ってみての感想はいかがでしょう?
A:川内村商工会事務局長とお会いして、本当にずっと苦労されていたんだなと感じました。辛いこと、大変なこと沢山あって、本当にお忙しいはずなのに笑顔で、時間かけて川内村のことや業務を説明頂いたことに大変感謝しています。
 また、お会いした川内村復興推進担当部門の方が「復興ではなくて、新しい川内村をつくりたい」とビジョンをおっしゃっていて、印象的でした。

Q:川内村で働くにあたって、どんな生活を送りたいですか?
A:まず一緒に働く人たちとコミュニケーションとって、顔を覚えたいです。それに、現在村に住んでいるという約500人の方々の顔を覚えて、まちを歩いてたら「安永さん!」なんて声かけてくれるようになりたいですね。
 ずっとTOTO株式会社に働いてきました。一回外に出ることによって、違った見方などを吸収して、成長したいです。会社に戻ったあと、周りの人たちに何か提供できればと思っています。

(2014年2月18日取材)

地元宮城のために何かを
宮城県女川町・復幸まちづくり女川合同会社へ派遣予定の松田豪さん

派遣先の復幸まちづくり女川合同会社、女川町役場、女川町商工会の方々と松田さん(中央)

派遣先の復幸まちづくり女川合同会社、女川町役場、女川町商工会の方々と松田さん(中央)

Q:今回、応募を決めた動機を教えてください。
A:震災当時は東北支社にいましたから、実は私も仙台で被災しているんです。避難所に行くほどではありませんでしたが、生活物資を求めて長蛇の列に並ぶといった被災生活を経験しました。出身も宮城なので、親類・知人も数多く被災しました。とにかく地元宮城のために何かしたいという思いで応募することにしました。年代的にも何かチャレンジしたいという想いもありました。

Q:これまでどのような業務に携わってきたのですか?
A:入社後19年は技術開発部門で九州に、その後に商品技術課という部門で10年間、東北支社にいまして、今年から東京勤務です。現在は、技術畑出身である点を生かした商品価値の訴求や、広義のお客様対応が主な業務です。

Q:すでに着任予定先を訪ねたそうですが、どのような印象でしたか?
A:先日、受け入れ先の方々とお会いしましたが、みなさんとても志が高く感動しました。家業も忙しいはずなのに、まちづくりのために懸命になっています。とても団結心のある地域だと思いました。現地の方が、「被災地だからという理由で物産を買ってもらえる時期はもう終わった。復興しながら生活基盤を整えていかないと」とおっしゃっていたのが印象に残りました。

Q:どのような業務に就くのでしょうか。
A:まだ細かいことは決まっていませんが、まちづくりを目指す合同会社で、高品質の水産品「AGAIN(あがいん)女川」のブランディングや、来年度に予定している漁業体験館の運営などに携わることになりそうです。応募の際、業務内容については、とくに希望を出しませんでした。とにかく私にできることであれば何でもやろうと思っています。

(2014年2月20日取材)

民間企業社員としての役割を果たしたい
福島県双葉町へ派遣予定の山中啓稔さん

派遣先の双葉町伊澤町長(中央)と山中さん(右)

派遣先の双葉町伊澤町長(中央)と山中さん(右)

Q:今回、応募をしようと思った一番の理由はなんですか?
A:震災から約3年、これまで東北の復興支援に具体的に携わる人というと、出身や赴任先など、被災地と何らかの縁が強い方が中心で、そういうつながりがなかった人は、いま一歩踏み出しづらい印象があると思います。
 私は福岡出身で、他には関西・関東と、3拠点の居住経験を経て、現在は再び福岡で勤めており、これまで東北へは出張・旅行で数回行ったことがある程度で、現地土着の知り合いはほとんどいません。
とはいえ日本は災害大国です。死ぬまで安全安心、という地域はおそらく稀有で、また昨今では、国内外で想定外の災害が毎年のように起こっています。であれば、これまで災害に縁がなかった地域の人間ほど、一定期間復興の活動に参画し、当事者意識を持って考え行動することの意味があると考えました。次の別の地域で経験するかもしれない「想定外」を排除し、今回の教訓を活かすことにつながっていくと思います。
東北に直接縁のない人間も支援の裾野を広げることで、どういう意義があるのか。自ら実験台になってみようと考えました。

Q:決心してから、実際に応募するのに時間はかかりましたか?
A:自分の今後のキャリア・人的ネットワークを含め、色々考えを巡らしました。結論(応募すること)を先に設定し、どうステップを踏むか考えることは、ビジネス課題と同じで、そんなに時間をかけることではないと思いました。
期間限定の単身でと相談したところ、家族は基本的に応援してくれました。当時小学2年生だった長女に大泣きされた時はさすがにめげそうになりましたが、ひるまず説得しましたね。

Q:これから派遣先でどういうふうに仕事をしていきたいですか?
A:与えられるミッションの迅速な遂行だけであれば、その道のプロである、行政の方や専門事業者への委託の方が確実かもしれません。なので、携わる業務以前に、今回民間企業に声がかかりそこで何が期待されているのか?という自身の役割を常に意識したいと考えています。また私が赴任する福島県双葉町は、職員の方が100人程の小規模な自治体とお聞きしてますので、色々な部署の方と横串で活動できることを楽しみにしています。

Q:ご自身の復興支援についての思いを聞かせてください。
A:いまだご苦労の最前線にいらっしゃる住民の方は、迅速な復旧を望まれているでしょうし、他方で次の世代はこれを機に、腰を据えた復興を希望されているかもしれません。皆さまの考えも多種多様で、各論の集約も優先順位付けも、難題だらけだと予想しています。
 やはり被災者の皆さまの現状にしっかり耳を傾け、同時に次の世代の笑顔が増えるような活動をしていきたいと思います。また赴任する自治体の職員ご自身も、被災者と聞いており、少しでも皆さまが元気になれるお手伝いができたらと考えています。

Q:現地に行くにあたり、楽しみにしていることはなんですか?
A:全てです。販売本部在籍当時、全国の支社を訪問し、様々なメンバーと交流することで、色々な刺激をもらえる経験が、今ふり返っても大変有意義でした。今回はこれまで経験のない組織・地域で業務に携われます。休日も東北の今についての見聞を深めようと考えています。

Q:派遣期間が終了したとき、どんな自分になっていることを期待しますか?
A:就職後、これまで1つの企業だけで働いてきました。IT・販売・法務と3部門経験しましたが、1つの会社の文化に染まっていることは紛れもない事実です。経験が長いマジョリティーの側に回ると、人間は柔軟な考えができなくなってしまいます。
 初めての地域で生活することにもなり、40代半ばにして新参者の立場で、ある意味リタイアー後の予行演習みたいな経験ができるのではないかとも思っています。
 社外で自分が何ができるのかをしっかりと棚卸し、次のキャリアが明確になっていることを目指したいと思います。と同時に、今回のこうした場・機会を設定いただいた皆さまに感謝し、逆に自分が次の場・機会を紹介できる立場になることを目指したいと思います。

(2014年2月21日取材)

記事提供:日本財団「WORK FOR 東北」