「福島こども力プロジェクト」プログラム運営団体 ディスカバリー・ジャパン株式会社 活動報告インタビュー[みんなでがんばろう日本●]

さまざまな体験活動を通じ、未来の福島を支える子どもの成長を支援する、東日本大震災復興支援財団の支援活動のひとつ、「福島こども力プロジェクト」。
2013年度のプログラム運営団体に、これまでの活動を振り返ってもらいました。

01実施期間
いきものカレッジ  :2013/8/5~7 
コズミックカレッジ :2013/12/22
開催場所
いきものカレッジ :猪苗代町
コズミックカレッジ:福島市
参加者数
いきものカレッジ : 22名 
コズミックカレッジ:176名

活動概要
「いきものカレッジ」「コズミックカレッジ」はディスカバリー・ジャパン株式会社が主催した、福島の子どもの好奇心を育むプログラムです。「いきものカレッジ」は2泊3日のキャンプ(自然体験活動)を通じて「身近にある自然の“ふしぎ”を発見」することをテーマに学び、最終日には「ふしぎ発見新聞」を作成して成果を発表しました。「コズミックカレッジ」はJAXAと主催し、福島大学で専門講師による科学実験を融合したプログラムを提供し、参加した親子がコミュニケーションを深めながら科学の面白さを体験しました。
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プログラム担当者
02ディスカバリー・ジャパン株式会社 マーケティングコミュニケーション部
柳内 麻貴 (ヤナイ マキ)
東京生まれ。大学卒業後、環境基準審査に関わる財団法人に勤務。2005年に音楽専門CS放送局(MTV)へ転職し”Public Social Annoucement(メディアが果たす社会貢献活動)”をテーマにした企画・プロジェクト・番組を担当。HIV/AIDS予防啓発、環境問題、人身取引問題などの社会問題をテーマにプロジェクトを立ち上げ、プロモーションなどを実施。2011年ディスカバリー・ジャパン㈱マーケティング部入社。CSR事業や子供向けイベント、番組のマーケティングプロモーションを担当。

03ディスカバリー・ジャパン株式会社 メディアセールス部
田中 宏(タナカ ヒロシ)
愛知県生まれ。大学卒業後、出版社勤務を経て2008年ディスカバリー・ジャパン(株)メディアセールス部入社。アウトドアやサイエンス系イベントなどのスポンサーシップ事業を担当。ディスカバリーならでは世界観で作るオリジナルイベントや、グローバル感のある映像・番組制作を通して、企業のプロモーション活動を行っている。

-柳内さんは震災後、個人的に福島に支援活動をしに行ったと聞いています。具体的にどのような活動をされていたのですか?
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柳内:震災後、南相馬市の仮設住宅で避難生活をしている子供たちが、クリスマス会をできずに寂しがっていると知り、友人たちと「じゃあ私たちがサンタになって、楽しめる環境を作ってあげよう!」と計画しました。いろんなプレゼントや屋台の準備、ケーキ作りの材料などを用意し、バスに乗って南相馬に行きました。このような経緯もあって、昨年、「福島こども力プロジェクト」のプログラムとして、自然体験を通じた人材育成プログラムを実施できないかというご相談をいただいた際、今度は会社としてぜひご協力したいと思い、プログラムを実施させていただくことになりました。

-「いきものカレッジ」を福島で開催する際、何か他の会場との違いを感じたりはしましたか?
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田中:私は震災後に福島を訪れるのはこのイベントが初めてだったのですが、、イベントが始まってすぐは他の会場との違いはそれほど感じなかったですね。「子どもはやっぱり子ども」だと。福島で出会った子どもたちは素直で、「自然が好き!楽しもう!」という気持ちが見えました。ところが、色々話をしてみると、一見明るい表情に見えて、実は友達が転居してしまったとか、実は彼らなりに震災の影響を受け止めているという点で、他の会場の子どもとは違う印象を持ちました。我々も福島の子どもたちと接するにあたり、震災当時の話をする時にはどのように話そうかと事前に相談していたのですが、彼らは思っていたよりも大人のリアルな対応を求めているように思いました。

-「いきものカレッジ」の福島での開催に際して何か社内に影響はありましたか?

柳内:通常、「いきものカレッジ」の運営はマーケティング部、メディアセールス部、ディストリビューション部で行っています。しかし、今回は「東日本大震災復興支援」という誰もが取り組むべきテーマだと考え、会社のCSR活動という意味も含めて、全部署から1名ずつ運営に参加してもらうことにしました。参加者にはカレッジの企画内容、進捗など、各部署で詳細に報告してもらい、全社員がこの企画に関心を持ち、協力できるベース作りを整えました。

-関わった社員の方の反応や感想はいかがでしたか?
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柳内:とても反応が良く、「楽しかった」「またやりたい」と言う声を聞きます。帰り際に子どもたちが今後も交流を持とうとしてくれた姿勢に感動していた社員もいました。私たちはディスカバリーチャンネル、アニマルプラネットのファンを育てたいので、今回のキャンプイベントが子どもたちに素敵な記憶として残ってくれるといいなと思います。また、このキャンプイベントを通じて、現地のさまざまな方からもご協力いただき、社員たちが福島の皆さんから直接お話をうかがうことができたことは、今の福島を知る良い機会となりました。

-「コズミックカレッジ」についてはいかがでしたか?コスミックカレッジは日本各地で開催されていますが、福島での開催で気が付いた点などありましたか?
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柳内:「コズミックカレッジ」では親子で参加できるところにも力を入れています。普段はなかなか「一緒に学ぶ」という体験をすることが難しいと思いますが、このイベントに親子単位で参加していただけると、その後の親子の会話にもなるし、一緒に体験をしたという結束のようなものができる点も意義があると思います。

田中:福島で弊社が「コズミックカレッジ」を主催するのは初めての試みでした。興味を持つ子どもがどの位いるのかな?と思っていたのですが、福島には宇宙に関心の高い子が想像以上に多く、参加人数も多く集まりました。

柳内:福島での「コズミックカレッジ」開催では、恵まれていた点がいくつかありました。、例えば、地元・福島大学の学生たちがボランティアとして手伝ってくれたことです。参加動機を聞いたところ、「自分たちには子どもたちに直接できることがないから、手伝いたくて…。」と言ってくれた学生もいました。

-教育委員会からも非常に高い評価を得られましたね。

柳内:さまざまな方々や、企業、教育委員会、さらに地元のメディアとも連携させていただけたことを本当に感謝しています。関わってくださった方々に満足いただける内容を作り上げられて、とても嬉しく思っています。運営面では駅から遠い会場で実施することをずっと懸念していました。加えて当日は雪まで降っていましたし。大丈夫かな、と心配になる天候でしたが、当日は多くの方々に参加いただけたので安心しました。

福島で色々な方の協力があって、プログラムを提供できた

-今回福島こども力プロジェクトの一環としてカレッジを運営してみて、企業として良かった点や発見はありましたか?
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柳内:「福島こども力プロジェクト」は福島の子どもたちのためにプログラムを実施するという明確な目的があるので、福島で開催する両企画に協力してくださった各企業のモチベーションが通常とは違いました。普段はイベントの実施予算を集めるだけでも苦労することが多々ありますが、この企画の場合は「企画の目的に協力したいと思ったので、僕たちも手伝います!」と快く言ってくださったのです。そのような方々にお力添えいただけたことが、主催企業としてはとても嬉しかったです。
カレッジの後も「色々お互いに協力していきましょう」というお話をさせていただいており、今後も新しいチャレンジが生まれると思います。

田中:企業として「寄附をします」ということであれば、手間がかからず、実はそれほどハードルも高くないのですが、今回は「会社の活動」としてイベントを実践したので、それぞれが信念を持っているだけに各部署の見解の刷り合わせに苦労しましたね。実は柳内ともこのイベントに関して社内で何度も打ち合わせました。

柳内:ほんと何度もしましたね、(笑)。ケンカしましたし~。

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田中:柳内はその頃、福島を何度も訪れていたので、「福島の現状ってこうだよ」と教えてくれるのですが、実際に行ったことがない私にはイマイチ分からない部分もあったりしました。その後、私も福島に行ったら色んなことを少しずつ理解したり教えてもらったりして分かってきました。結論として、弊社は「福島こども力プロジェクト」に参画したことで、非常に得るものが大きかったです。各企業が寄附をすることも大切だと思いますし、大変だとも理解しています。しかし、実際に復興支援に関われる機会はなかなか無いと思います。今回、「福島こども力プロジェクト」の中で実際にプログラムを提供するという機会に恵まれて、子どもたちとしっかり触れ合えたのは非常に有り難かったです。

「まなぶことの楽しさ」を知る‘きっかけ’を提供していきたい

-子どもの教育分野で今後の展望などはありますか?
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田中:これからも放送やイベントなどを通して、サイエンスやテクノロジーの面白さを伝えていければと思っています。特に日本の科学技術をもっと応援していきたいと思っています。
そのため、福島から科学分野のトップリーダーが生まれてくれたらいいなというのは私たちの希望です。例えば、「コズミックカレッジ」で熱心にメモを取るような子どもの才能をもっと伸ばしてあげたいという気持ちは強くあります。福島にいるそのような子どもが、「僕たち、私たちが福島の未来のために科学技術を通して何かをしたい!」って思うきっかけになればいいなというのが、コズミックカレッジを開催した弊社の想いです。
「いきものカレッジ」についても同様で、「自分が育った環境の素晴らしさ」について知って欲しいのです。大人になった時、故郷の良さを思い起こしてもらうためには、いきものカレッジでの体験のようなことが大切だと思いますので、これからも子どもたちを応援していきたいと思います。

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柳内:これからも企業としてさまざまなイベントを続けていきますが、子どもたちや親御さんへ、学ぶことの楽しさを知る「きっかけ作り」を大切にしていきたいと思っています。それは、押し付けがましい教育や勉強方法からは生まれません。それは学校では学べないことを学んで、「楽しい!」と思ってもらえる企画、内容、テーマ、雰囲気までを作り上げて、成り立つのかな…と。その“楽しいきっかけ”がスタートになって、「もっと詳しく知りたい!」と子どもたちが思ってくれることが、私たちの取り組みの意義があると思っています。そのひとつとして「いきものカレッジ」「コズミックカレッジ」を福島で実施できた今回は、本当に意義深いです。
どんな行動にも、興味や好奇心を抱くにも、誰でも “きっかけ”があると思います。 “科学”や“動物”に限らず、「発見する楽しさ」があるイベントを、今後も実施できるといいなと思っています。

私たちがお話を聞いてきました

福島こども力プロジェクト担当:三小田・高森

福島こども力プロジェクト担当:三小田・高森


記事提供:東日本大震災復興支援財団「みんなでがんばろう日本●」福島こども力プロジェクト