「支援」ではなく「挑戦」を。釜石から被災地との新たな関わり方を提案します[まちづくり釜石流]

図1

東日本大震災から3年半。2014年9月11日に、釜石インターンシッププログラム『KamaPro』の公式ウェブサイトをリリースしました。NPO法人ETIC.が震災復興リーダー支援プロジェクトの一環として公募した「地域の「ハブ機能」強化に取り組むモデル事業」の採択を受け、一般社団法人三陸ひとつなぎ自然を中心に釜援隊・釜石市の3者で企画・運営を行っています。『KamaPro』の事業ミッションは、学生・若手社会人に釜石のまちづくりに関わる機会を提供し、市内企業・団体が持つ「本気のやりたい」を実現すること。本稿ではインターンシップという切り口から、被災地との新たな関わり方を提案します。

人が育つ、まちが育つ

“適当に大学の講義に出て、家に帰る。将来の夢とかイメージできないし、自分に誇れるものもあまりない。なんというか、自信が無いんです…”

これは釜石で4か月のインターンを経験した都内の学生さんが、出合った頃につぶやいていた台詞です。彼は釜援隊協議会の議事録作成や三陸ひとつなぎ自然のエコツアー事業に関わり、地域の方々とのコミュニケーションを通じて、「自分が何者であるのか」を考えるようになったと言います。滞在最終日に開催した活動報告会では、時間を共にした約30人の関係者が集まり、彼が釜石で得た経験を聞きました。「社会の課題は自分に関係していると気づいた」「物事を実際に動かすことは口で言うよりはるかに難しい」「やりたい事を見つけるにはまずやってみることから」というキーメッセージを、少し照れつつも前を向いて発表する彼に4か月前の弱々しさはありませんでした。

インターンや中長期ボランティアで釜石を訪れる人の動機は多様で、被災地のために何かしたいという気持ちが根底にありつつも、それは自分探しの旅だったり、自身の能力を発揮するキャリア形成の機会であったりします。三陸ひとつなぎ自然の中長期ボランティアに参加した人の中には、釜石での経験をキッカケに、大学でボランティアサークルを立ち上げた人、IT分野で起業した人、休職明けに未経験の企画・商品開発業務を任された人がいます。釜石出身の一人の学生さんは「釜石の復興に取り組み、釜石の魅力を語るヨソモノ(釜援隊)と出会い、卒業後は釜石に戻って働きたいと思うようになった」と話してくれました。一方で、震災の疲労から事業をやめようとしていた市内の農家さんがボランティアとの交流を通じてやりがいを取り戻したり、外から来た人たちに美味しい郷土料理を食べさせたいという想いで起業したお母さんたちがいます。釜石を訪れる人と、釜石という地域がともに育ちあう。釜石はいま、そんな「そだちば」になっています。

釜石インターンによって得られる経験

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平成25年に経済産業省がまとめた報告書によると、一般的なインターンシップの教育効果は「キャリア教育(表面的な就職活動支援とは異なる)」「専門教育の実質化」「教養教育(社会における関係性の理解)」の3つに分類されるそうです(※注1)。「キャリア教育」は社会人基礎力などの汎用的能力の獲得やリーダーシップの育成、「専門教育の実質化」は専門分野と関連する業務体験を通じた学ぶ意欲の向上と実践的なフィードバック、「教養教育」は課題解決や人との出会いによって “学ぶこと”“働くこと”“生きること”が有機的につながることを指しています。これらは、釜石インターンを経験された方の変化を見ていても、あるいは、震災後に移住し、釜石の復興まちづくりに携わっている私自身のことを振り返っても納得感のある分析です。釜石には、多様なUIターン者らとともに、行政・企業・NPOの垣根を越えて、等身大の社会課題解決に取り組むチャンスが数多くあります。震災から3年半というタイミングで、『KamaPro』というサービスを立ち上げた背景には、単なる「支援」ではなく、様々な「挑戦」のフィールドとして、釜石の新たな価値を提案していきたいというメッセージが込められています。

『KamaPro』お披露目イベント@東京(9/30)

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本稿でご紹介した釜石インターンシッププログラム『KamaPro』のお披露目イベントを9月30日(火)に東京で開催します。釜石でのインターンシップにご関心のある方はぜひご参加ください。

詳細はこちらから。

連載コラム「まちづくり釜石流」では釜援隊の活動を中心に、企業連携や外部人材活用を推進する釜石の復興プロセスを共有し、人口減少時代のおけるまちづくりの未来を綴ります。
文/石井 重成 釜石市復興推進本部事務局兼総合政策課 係長(官民連携推進担当)

※注1 平成24年度産業経済研究委託事業「産学連携によるインターンシップのあり方に関する調査」より作成