東の食の実行会議レポート 復興庁小泉進次郎氏×ローソン新浪氏

OLYMPUS DIGITAL CAMERA7月18日、19日の2日間にかけ、「東の食の実行会議」が仙台市内で開催された。食をテーマに復興施策を議論し、具体的なアクションやプロジェクトを生み出そうとするもので、行政・生産者・企業・NPOの各界から復興現場のキーパーソン100人が集結した。

本稿では、初日プログラムの中から、復興庁・小泉進次郎大臣政務官と株式会社ローソン・新浪剛史取締役会長によるパネルディスカッションをレポートする。モデレーターは、会議の実行委員長であるオイシックス株式会社・高島宏平代表取締役社長がつとめた。

3年間の手応えと生産現場への期待

新浪氏:規模よりも生産現場のストーリーが価値になる
小泉氏:各地域、「違い」を明確に

まず最初に、この3年の取り組みを振り返りながら、両氏から感じている手応えや生産現場への期待が語られた。

ローソンは震災後の取り組みとして、東北の各地域の食材を活用してご当地弁当やパンなどの展開。それぞれの地域の特徴的な食材の活用や、地域の学校と連携しての商品開発などを行ってきた。しかし新浪氏は「他のコンビニさん同様に普通に考えつくことは大体やってきた。しかし、なにかが足りない。もっと面白くて、みんなが全く気づかなかった新しい魅力を発掘したい」と続けた。

そうした意味でも、今後求められるものは「ストーリー」のある商品だと話した。「作り手のパッション、背景やおもしろさが重要。先日、農家の方がつくった漬け物がめちゃくちゃ美味しかった。聞くと流通されない曲がったキュウリを使っていて、しかも作り方も面白い。こうしたものを発掘していきたい」。そしてその「面白さ」「ストーリーの価値」に気づくためにも、生産現場の方はもっと外を見て欲しい、町に来て欲しいと続けた。「地域の当たり前が都市ではあたりまえじゃない。特にこれから健康志向のお客様を考えても「自然」の価値が上がって行く。自然の中にいる皆さんだからこそつくれる価値を一緒に形にしていきたい」と集まった生産者へ期待を語った。

続いて、震災直後は野党議院として、その後は復興庁大臣政務官として東北各地を精力的に訪れ続けた小泉氏は、「被災地というゲタは長くは続かないという現実を見つめるべき」と産業復興にかけての話を開始。被災地としてではなく、美味しさや会社としての信頼性などの本物の価値で選ばれるとならないと持続可能性がないと続けた。「だから同じ分野の最高レベルを見て欲しい。今どれくらいのレベルにいるのかを知るべきだ。水産品においては各地域で同じ生産物、製品がある中で、最高レベルから学びながら何が違うのか、何が自身の強みなのかを突き詰めて欲しい」とエールを送った。またそうした違いを感じた例として、「こんなにいらないだろってくらい(会場笑)魚が盛ってある。あのインパクトは絶対に忘れない」と宮城県女川町の「女川丼」をあげた。

政界と財界、行政と企業、双方に望むもの

新浪氏:行政内にビジネスの分かる人材を
小泉氏:「ふるさと納人」働く場としての東北

higashino

続いて、両者に対して、政界および財界に求めるものが問われた。

新浪氏は「行政サイドにビジネスが分かる人間が入ること」と即答。スピードを求める企業にとって、行政との協業においてスピード感があわないことが多いという新浪氏。IターンUターン人材や、企業でビジネス経験のある60代などを例にあげながら、ビジネスの話を企業とできる人材、掛け橋になってくれる人材の重要性を強調した。企業からの社員派遣に関しても、給与差を埋める企業側の予算や行政からの補助などの整備により実現できるだろうと話した。

小泉氏もその論に賛同。「ふるさと納人」という言葉を使い民間人材の東北での就業への期待を話した。「自治体に限らず東北では人手が確保できない課題がある。例えば多くの人がふるさとに帰るお盆の期間は、そこでの仕事の可能性を見せられるか、Uターンを促進する上で重要なタイミングとも言える」と続けた。

また人材面では、復興において行政内で生まれた事例を紹介。「いま復興庁と言う名刺をもっている人は3種類いる。霞ヶ関官僚、地方自治体からの出向者、民間からの出向者の三位一体組織。さらに、東北の各市町村には霞ヶ関の官僚が何人も派遣され、副市長などの要職についている。こうした官と民、そして中央と地方と言った垣根を超えた人材交流は、今までには無かった。行政の新しい形が東北から生まれていると言える」とその重要性を強調した。

今後に向けて必要な取り組み

新浪氏:アーリーサクセスと国際安全規格の取得
小泉氏:復興の魅力を強く発信

産業復興において求められる取り組みとして、新浪氏は「アーリーサクセス」について言及。「最初は小さくても、ピリっと個性のあるもので成功モデルをつくる。そこから規模を拡大していくのは、企業が得意とする所で一緒にやっていきたい」とし、ローソンにおけるナチュラルローソンの事例を交えながら語った。規模の論点には小泉氏も参加。行政においてもの市町村ごとにサイズが違う中、合併などで大きくするだけが解ではなく、小さいからこそスピードやまとまりを持って進められることも多いと発言。「通常国会で、行政同士の連携を促すような法案を通した。今後は行政間の連携や条約が肝になっていくのではないか」と続けた。

新浪氏はまとめとして、東北の食産業の海外展開への期待を語った。日本の食材は世界基準では安心となっておらず、なかなか輸出できないという現状をふまえ、HACCPやISO、GAPといった国際安全規格への対応の必要性に言及。その上で「今後、まだまだアジアは伸びる。世界は人口爆発であり、夢がある。スクラッチ(ゼロ)からでも仕組みをつくることに投資をすべきだ」と語った。

小泉氏は今後の食産業そして東北全体の復興へ向けてのメッセージとして、復興現場の魅力の情報発信を求めた。「震災から3年で風化と言われる一方、私の元には多くのメッセージが届いている。東北の力になりたいのになり方が分からない人はとても多い。機会を探してる。」として、支援活動を行う企業や東北へ訪れる個人に対して、復興に関わってることをもっと積極的に発信してほしいと期待を語った。

さらに原発事故や東日本大震災は戦争に匹敵するくらいの歴史の転換点と位置づけ、「今ここで何かをしたいと思う事は当たり前。次世代が夢を叶えられるような東北をつくろうと行動する大人達がいれば、きっと子どもが憧れを持ち、良い世の中をつくることができる。坂本龍馬が今も尊敬されているように、今の世代の僕らが頑張ることが必ず後世につながっていく」と復興に関わることの意義について語り、セッションを締めた。