[寄稿]復興の芽を育てるこれからのボランティア

(本稿はNPO法人ボランティアインフォの大藤多香子氏の寄稿文です)

震災から1年以上が経った今、被災地域ではあちこちで復興の芽が生まれています。
それは、仮設住宅や被災した集落単位で、女性たちが手仕事によって商品を生み出し、売れれば僅かながらでも日々の暮らしを支える糧となり、自立への一歩となる、という取組です。

地域の被災女性の方々が自ら創作団体を立ち上げ、支援物資をリサイクルしたり、地域のシンボルをモチーフに創作するところなど、担い手のスタイルは実に様々です。
気が付けば私自身も様々な取り組みを取材し、気に入って買い求めた商品は大事に使い続けています。

先日訪れた仙台市若林区にある卸町五丁目仮設住宅では、和柄の布を使った手作りの小物を作っていました。作り手となっているのは、小さなお子さんがいて昼間外に働きに行けないお母さんやご高齢の方々です。
ここでの取り組みの特徴は、センスある布選びにあります。裏地などには支援でもらったハギレなどを使いますが、表側に使う布は仙台市内の生地屋さんへ買いに出かけるそうです。
「やっぱり作品のイメージとか、雰囲気に合う生地があるので。それに外に布を買い出しに出かけること自体も息抜きになるでしょう」
と話してくれたのは自治会長さんでした。
確かに作品を実際に見せて頂くと、大正モダンを思わせるちょっとレトロな和柄がとても素敵で、多少コストは膨らんでも「作り手として譲れないこだわり」を感じました。

そうした創作活動の中で「今困っていること」を伺うと、それは「売れるためのアイディア」でした。ここで必要とされているのは、「材料を支援したり一緒に作ったりしてくれるボランティア」ではなく、「一緒に思い悩み、考えてくれるボランティア」なのです。

都会から支援団体がサポートにつき、商品の開発や販売経路の確保、ブランディング、そしてソーシャルメディアを使った広報活動まで行うところがある一方で、そういった事例を参考にしながらも、手探りで慣れないビジネスに挑むお母さんたち・・・。

状況は違えど、作り手として作品に込める思いは一緒なのだと思います。だとしたら、ゼロから出発したお母さんたちを、少しでも活動が広がるように支援したい。復興商品が売れ続けるのは、この1年が勝負と言われ、「震災から2年が経つころには、世間の興味関心も低下していく」と教えてくれたのも、被災してなお針を動かすお母さんでした。

こうした復興の芽は支援する側が見つけ、光を当てていかないと、萎んでしまう可能性もあります。「やりたい」「こんなことをしてみたい」という前向きな気持ちがなかなか形にならず、立ち消えてしまうのです。そこでボランティアインフォはインターネットを使った情報収集と発信と共に、支援団体やそうしたお母さん達の団体を定期的に訪問し、「今困っていること」や「やってみたいこと」を聞き、課題解決のためのボランティアと繋いできました。まるで私が前職の酒屋でやっていた「御用聞き」みたいですね。

商品が売れないなら、そのつまずきの理由を一緒に考え、一緒に課題に向き合い、一緒に課題克服の喜びを共有する─。そんな願いを宿したボランティアと被災地を結びつけるのが、今回私達が立ち上げようとしている「スキルを生かした被災地の課題解決ツアー(名称未定)」です。

これは課題解決というミッションのもとに集まったボランティアが、被災地の困っている団体を訪問し課題をシェアして、ツアー中に解決方法をみっちりと考えるという試みです。

せっかく作るのならたくさんの人の手に渡って、「たくさんの支援をありがとう」の気持ちを伝えて欲しいし、作り手の収入になってほしいと思います。
卸町五丁目仮設の和柄小物を、もっと魅力ある「卸町五丁目ブランド」として発信していくためには、何が必要なのか!? そういった課題をボランティアが考え提案する新しい支援の形を、このツアーで実現していきたいと思います。
目指すのは「一方的な支援」ではなく、「被災地の方々と一緒に取り組む」こと─。
皆さんも復興の芽を一緒に育ててみませんか?

大藤さんicon文/大藤多香子(おおふじたかこ)NPO法人ボランティアインフォ理事
大学卒業後、酒類・食品販売の㈱カクヤスに3年間勤務。震災後、ボランティア で参加した活動を継続するため、同社を退職後2011年5月にNPO法人ボランティアインフォを発足。被災地域で活動するボランティア団体の情報発信をサポートしている。