【Leaders Interview】マッチングは始まり。現地の運営機能にリソースを投入したい。

インタビュー先:山本啓一朗さん
復興庁宮城復興局 政策調査官/一般社団法人プロジェクト結コンソーシアム

Q.大手企業と東北事業者を繋ぐ「結の場」事業をどう振り返りますか

復興庁宮城復興局 政策調査官/一般社団法人プロジェクト結コンソーシアム 山本啓一朗さん宮城県石巻市から始まり、宮城県内で4回、岩手と福島で各1回のマッチングワークショップを開催しました。そこから50のプロジェクトが生まれ、今後さらに増えるでしょう。件数としては悪くないと思います。

一方でその中身を見ると、当初目的としていた「大手企業ならではのリソースを活用する」形になった案件はほんの一握り。社会貢献の枠を出て、複数部署を横断するような共同事業の実現には、社内調整に大きな壁があったのも事実です。

Q.支援企業を巻き込むには何が必要でしょうか

好事例の1つは、気仙沼を「サメの街」としてブランディングするプロジェクトです。昨年2月のワークショップで生まれたアイディアは7月に協議会設立へとつながり、「シャークナゲット」などサメ肉商品の試食会や日本各地での飲食店開拓など具体的な動きも進んでいます。NTTドコモや丹青社など支援企業も高いコミットメントで関わっており、今年は肉だけでない新商品開発に取り組んでいく予定です。

今までフカヒレだけが食材として認知されているサメを活用し、新しい市場を創り出そうという課題設定が魅力的でしたが、何よりも地元事業者の「熱」が支援企業を動かしたと感じています。当初は地元2事業者により始まったプロジェクトでしたが、その熱が支援企業に伝わり、支援企業の熱がその他の地元企業に伝わって…気仙沼で車座になって議論を重ねる中でどんどん巻き込んでいくようになりました。

Q.結の場から見えてきたことは何でしょう

一番の学びは、マッチングをして終わりではなく、そこから始まるということです。上述の気仙沼のサメも他のプロジェクトでもそうですが、半年、1年と時間をかける中でだんだんと熱が生まれてきます。受け身だったところから、あれが良い、こうしたいとアイデアが出て、成果につながるものが生まれてくるのです。

だからマッチング後にプロジェクトを引っ張るプロマネや事務局機能こそが重要なのですが、そこになかなかスポットが当たりづらいのが今の課題です。予算確保に加えて、その役割を担うことができる、ビジネス経験がありつつステークホルダーが多い中でマネジメントする力・経験を持つような人材の創出も、合わせて必要でしょう。

Q.NECに戻った後、復興庁での2年間をどう活かしていけそうですか

4月からは、CSR部門やオリンピック・パラリンピックの準備室などを兼務することになります。特にオリンピックは、実は復興とステークホルダーの構造が似ています。行政や政治、多業種の企業、NPOなどがからむ中でどう連携を進めるか。この2年で培った産官学民のネットワークと経験がまさに活かせると思います。また、東北を含む日本全体が、世界中の人へのおもてなしの受け皿になるようなオリンピックにすることが、復興に携わった僕が担当する理由だと思っています。

【復興庁宮城復興局 政策調査官/一般社団法人プロジェクト結コンソーシアム 山本啓一朗さん プロフィール】

1999年日本電気株式会社(NEC)へ入社の後2012年3月より復興庁宮城復興局へ出向。大手企業と東北事業者をマッチングし地域経済の立て直しを目指す「結の場」の推進などを行う。2014年3月末をもって出向期間を終了し、NECへ復職する。