他地域に学ぶvol.10 京都府京都市【前編】

地域の10年後を見据えて若い世代が輝く、働き方と生き方を見つける場づくり

「京都移住計画」の代表、田村篤史さん。他にも町づくり系で3つの仕事を持ち、多様な働き方があることを体現している。

「京都移住計画」の代表、田村篤史さん。他にも町づくり系で3つの仕事を持ち、多様な働き方があることを体現している。

「まちづくり」は、東北被災各地が目下取り組んでいる復興の主題の一つ。層の厚い高齢者に対するケアや施策は当然重要だが、一方で20~40代の働き盛り・子育て世代への視点も不可欠だろう。その地域に若い人がどれだけいるのか、若い世代が生き生きと仕事・生活ができるかどうかは、5年後・10年後・20年後の地域の姿、そして次世代へとつながるからだ。

そこで今回は京都市で、若い世代を中心に盛り上がっている2つの取り組みを取材した。居場所・つながり・生業・やりがいを創り出し、移住者を増やす火種を起こしている活動の中に、東北にも活かせるヒントを探した。

いつかをリアルに変える「京都移住計画」

月1回で開催している移住者のリアルな集い「京都移住茶論(サロン)」。毎回趣向を凝らし、この回は京都のさまざまなテーマで地図づくりをした。

月1回で開催している移住者のリアルな集い「京都移住茶論(サロン)」。毎回趣向を凝らし、この回は京都のさまざまなテーマで地図づくりをした。

まず話を伺ったのは、元々京都出身で、東京で4年間働いた後にUターンした田村篤史さん。2013年の夏に、京都に住みたい人を応援する情報サイト「京都移住計画」を立ち上げ、さまざまなイベントや告知、移住者の声などを発信している。

移住した田村さんが実感したのは生活の変化だった。「東京では、高い家賃のために身を擦り減らすような働き方をして、帰っても寝るだけで。でも京都では同じ間取りでも家賃が4万円くらい安く、時間にも余裕ができました」。

京都に縁があり「いつかは」戻りたいけど……と言っている東京の仲間たちにも移住を現実にしてほしいと、前述のサイトに加えて田村さんが始めたのは、移住した人同士の交流の場だった。

「京都移住計画」と「ローカルキャリアカフェ」という団体で共催した「どこで、何をして生きてゆく?」というテーマのイベントの様子。

「京都移住計画」と「ローカルキャリアカフェ」という団体で共催した「どこで、何をして生きてゆく?」というテーマのイベントの様子。

それがほぼ月一回開催の「京都移住茶論(サロン)」。参加者は、毎回20~30名でこれまでのべ200名を越えた。内訳はUターンよりも他地域からのIターン者が多く70%。中でも特に関東からが多く55%だという。移住希望の人も毎回数名が参加してくれている。

移住者が楽しそう!それが一番の魅力に

「来てください」という他県への説明会ではなく、移住者が集う会を行う理由は何だろうか。

地域で古くから親しまれてきたビルは、上の世代の人たちも関心を持ってくれる。カフェが併設されていることも立ち寄りやすいポイントだとか。

地域で古くから親しまれてきたビルは、上の世代の人たちも関心を持ってくれる。カフェが併設されていることも立ち寄りやすいポイントだとか。

「移住した人が京都暮らしを楽しんでいることが、何よりの魅力や安心感になると思うんです。また参加者も会がきっかけで友達が増え、よりアクティブになっています。そうするとSNSの発信も増えて、それを各人の地元の友人が見て。そんなふうに少しずつ波及していけばと思います」。ちなみに東京など他県でのイベントも開催しているが、移住説明会ではなく、「これからの働き方・生き方」を考える切り口で、ワークショップ形式で行っている。

「生きたい場所で生きられる人がもっと増えたら」と理想を語る田村さん。今後はさらに、仕事の発掘と発信、地元の方との交流に力を入れていくという。

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