超高齢化社会を支える地域づくり 事業の多角展開で包括的に地域を支える

一般社団法人りぷらす代表理事の橋本大吾さん。理学療法師でもある。

一般社団法人りぷらす代表理事の橋本大吾さん。理学療法師でもある。

宮城県石巻市で今年5月から高齢者を対象としたデイサービスを中心とした事業を行っている一般社団法人りぷらす。多角的な事業展開を通じ、地域を巻き込んで高齢者を支える仕組み作りに取り組んでいる。

宮城県は震災後に要介護認定者が急増し、震災後の2年間で全国ワーストの増加率。宮城県内でも石巻市の要介護認定増加率は女川町に次いで第2位となっている。りぷらすはその石巻市の中でも医療・介護過疎地である河北地域で事業を立ち上げた。

介護保険から卒業するための受け皿を

りぷらすの特徴は、介護保険からの卒業を目指した事業展開を行っていることだ。床から立つ・料理を作るなどのトレーニングを中心としたデイサービス事業では、身体機能と生活機能の回復・改善を目的とし、認定を受けるとなかなか脱することが出来ない要介護者へ、リハビリプログラムを提供している。

まず、一番にサービスを受ける方のやりたいこと、夢や目標を明確化する。その後、やりたいことを共有し、希望に合ったトレーニングを行う。デイサービスは最初の入り口であることから、「なぜここでサービスを受けるのかを意識することが重要」と代表理事の橋本さんは言う。

また、デイサービスから卒業した後の受け皿機能が弱いことから、「リハビリフィットネス事業」を6月に開始した。現在週に2回、要介護認定に満たないが健康に不安を抱える方や要介護サービスを受けながらさらに積極的に改善を望む方に対して、1時間500円という低料金でサービスを提供している。

早い段階での予防が体力回復のために重要だが、「問題は、我慢強い方が多いことと、相談する場所がないこと」だと橋本さんは感じている。そこで、早期の対策のために相談窓口も用意。相談がきっかけで、サービスを受ける人も多いという。「介護保険未満の方の受け皿がないということは、デイサービスを卒業した後の受け皿がないことと同じ」と同事業の意義を語る。

地域の自助力・互助力を高める

さらにりぷらすでは、秋であれば芋掘りといったイベントを行っている。これは「地域交流促進事業」の一環で、サービス利用者同士の交流を目的としたものだ。足場の悪い畑で作業することはバランスを取る練習になり、また楽しく体を動かすことで自分がどれだけ動けるかがわかるので自信にもつながる。

地域交流促進事業では、医療職の専門知識を介護職などに共有するための職種間での勉強会も開催。過疎地では専門職が少ないため、地域の中で支えていくことが重要になる。高齢化の進行に伴い、少ない専門職だけではサービスを提供できなくなることが懸念されている。被災地だけでなく全国で、症状の悪化を未然に防ぐ地域作りが必要とされている。

今後は、地域住民に対して講義などで予防に必要な専門知識と実技を共有する「地域健康サポーター事業」を行う予定だ。地域住民が主体的に予防に取り組むための基礎知識を身につけることで、地域住民の自助力・互助力を向上させ、地域を支える人を増やす。

「専門職に頼るということは税金を使うということを意味している。自らで判断し、住民同士で対処できるようになれば社会的な費用を削減していくことができるはず」と橋本さんは語る。

多角的な事業展開を行うりぷらす。現在人材を募集しており、更なる事業展開を図っていくという。震災により高齢化等の社会課題が「10年進んだ」と言われる被災地からのモデル作りに注目していきたい。

多角的な事業展開で健康的に生活し続けられる地域をつくる

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