ソウルオブ東北 提案型の支援で三陸をブランディング

三陸×ワイン。意外性をコンセプトに商品企画

同プロジェクトは、キリングループから5000万円の助成を受け進められている

同プロジェクトは、キリングループから5000万円の助成を受け進められている

岩手県大船渡市および陸前高田市の水産加工会社6社からなる協同組合「三陸パートナーズ」が、三陸海産物をブランディングするプロジェクトを進めている。商品開発の監修は有名シェフの熊谷喜八氏がつとめ、9月に行われた「いわて物産品コンクール」では最高賞の県知事賞を受賞するなど、好事例として注目を集めている。

三陸地方の多くの水産加工会社は、震災の影響で取引先を失った。行政や民間からの様々なサポートで、設備などのハード面での再建を果たした後も、取引先が戻らずに苦戦している例が多い。こうした中で三陸パートナーズは、地域内で横の連携をしながら新たな販路開拓、そして独自の商品開発を目指そうと設立されたものだ。

その立ち上げを企画から全面的にサポートしてきた団体がある。NPO法人ソウルオブ東北。理事長の岡部泉さんは東京でブランディングや飲食店企画の会社を経営しており、震災後に同団体を立ち上げ、食をテーマに復興支援活動を続けてきた。本業のノウハウを活かして、地域の企業とともに新商品を開発する。産業復興へ向け今、各地で求められている支援の形と言えるだろう。

開発された商品のコンセプトは「ワインに合う三陸の味」。和のイメージが強かった三陸で意外性を狙った。商品は有名シェフの本格的な料理を、簡単な調理で楽しめるように素材とソースのセットで届けられる。加工技術をベースとして生まれた「キッチンデリバリー」というビジネスモデルだ。

一人で何役もこなす

ソウルオブ東北理事長の岡部泉さん(左)と業務統括の高梨和良さん

ソウルオブ東北理事長の岡部泉さん(左)と業務統括の高梨和良さん

岡部さんは、どのようにこの協業を実現したのだろうか。昨年夏頃から三陸沿岸の加工会社の訪問を開始した際、「設備は戻ったが何をつくってよいか分からない」と悩む経営者たちに出会ったのが始まり。商品開発経験が少なかったという各社に対して、岡部さんは「最初は、口で説明するよりカタチを見せるべき」と迫力の提案で最終形を見せたと言う。

加えて、企画やデザインだけではなく、東京でシンポジウムを開催して販売先とのつなぎも行った。どんな相手に売るのかを「見える化」したこと、販売先の反応が売れるという手応えにつながったことで、プロジェクトが加速していった。

そして何より強調するのは現地との信頼関係だ。繰り返し足を運んで会話を重ねながら関係を構築。「やっていて楽しいと思える関係でないと続かないですよね」と岡部さん。会議においても、日に日に活発な意見が出るようになっていったと言う。

地元との信頼関係をベースにしながら、圧倒的な提案力で牽引し、売り先づくりや時には商品に使う容器の値段まで調べたと言う岡部さん。一つの機能だけでなく、一人何役もこなしていくことがポイントだったようだ。外部からの支援者のあり方の一つの形と言えるだろう。

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