宮城県東松島市インドネシア・アチェ市と復興のノウハウ共有 支援からエンパワーメントへ

バンダ・アチェ市から派遣された同市職員のハフリザさん(右)とユリマルトゥニスさん(左)

バンダ・アチェ市から派遣された同市職員のハフリザさん(右)とユリマルトゥニスさん(左)

 被災地同士の復興ノウハウの共有を目指して、宮城県・東松島市で研修中のインドネシア国バンダ・アチェ市の職員二人が、スマトラ沖地震・津波からの復興プロセスや成果・課題について市役所や東北大学で報告を行なった。

迅速な判断を行った大統領直下の復興庁

 バンダ・アチェ市はインドネシア北西部に位置する人口22万人程の街だ。2004年のスマトラ沖地震・津波によって都市基盤の3分の1が破壊し、6万人以上の死者・行方不明者が出た。震災後、大統領直下に設置されたBRR(アチェ・ニアス復旧復興庁)に復旧・復興事業の権限が一任され、地方政府や国内外の支援組織らと連携をはかりながら、迅速な復旧作業を推進した。

 研修員の一人、ハフリザ氏は「常に最善の策を模索し、失敗からも教訓を活かして、改善を重ねて行った」と語る。

起業支援を含むエンパワーメント事業

 なかでも重視されたのが、エンパワーメント事業だ。震災後、アチェには多くの外資系企業が参入し、多額の支援金が寄せられた。しかし、将来的には自立した経済基盤を地域に確立することが必要だ。そこでBRRは、現地団体と協力してニーズ調査を行い、職業訓練や福祉制度の改善など、数多くの事業を展開した。例えば、経済的福祉事業では、女性による手工芸ビジネスの起業を支援。手工芸技術の伝達ばかりではなく、ビジネスモデルの構築や受益プロセス確立に至るまで、包括的に修得できるプログラムを提供した。また低金利融資制度を制定し、現地の組合を介して、少人数の女性グループへの融資を行なっている。ここではメンバーに返済の共同責任を担わせることによって、ピアプレッシャー(仲間からの圧力)を持たせ、資金返済が促されるしくみが機能している。

低金利融資制度を活用した女性グループへのエンパワーメントモデル

個人の可能性を発掘する視点を

 被災者を弱者としてではなく、可能性を持った個人として捉えるエンパワーメントの視点は新鮮であり、報告会参加者からは自分たちの復興の参考にしたいとの感想が寄せられた。農業従事者や若者層など、より広い対象に向けた展開にも期待が寄せられる。

 アチェ市職員の東松島市での研修は、来年2月までの約1年間。JICA(国際協力機構)が企画し、東松島みらいとし機構(HOPE)が運営を担っている。両市の間では、再生可能エネルギーや農水産業など複数分野での相互復興協力の可能性が模索されており、今後は東松島市の復興状況の海外発信が予定されている。

文/今井麻希子

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