地域復興支援「結の場」中間報告 石巻で19の経営力強化プロジェクト始動

6月26日には企業マルシェの第1弾が行われた

6月26日には企業マルシェの第1弾が行われた

復興庁宮城復興局が石巻商工会議所と共同で進めている地域復興マッチング「結の場」の事業成果中間報告が発表された。19のプロジェクトが開始することになったと同時に、人材面などで課題も明確になった。

 

本業を活かした支援のプロジェクト化

「結の場」は被災地域企業の経営課題解決や経営力強化、地域経済の継続的発展を狙うコミュニティ形成を目的とした、被災地外の支援企業とのマッチングの場。昨年11月に開催された石巻では、水産加工業をテーマに13の被災地企業と33の支援企業が参加した。これまでに支援企業からは70を超える支援・連携の提案がなされ、19件のマッチングが成立、さらに16のプロジェクトで調整が進んでいる。

プロジェクトの領域は販路開拓、販促・ブランド強化、商品開発、人材育成など多岐に渡る。キリン協和フーズは食品評価技術を提供し、被災企業主力商品の付加価値向上に結びつける施策を開始。凸版印刷はマーケティングやリサーチノウハウを元に、水産加工企業のブランディングをする。いずれも支援企業の本業の強みを活かした支援活動がプロジェクト化した形だ。

浮き彫りになった課題

一方で、明らかになった課題もある。ひとつは、外部企業とマッチング事業を推進するにあたっての被災地のマンパワー不足だ。数十に渡る支援要請をプロジェクト化するには膨大な作業が発生する。今回のように復興庁が間に入る形でなくても被災地内外の連携施策が進むことが望ましい。「結の場」を企画、推進している宮城復興局の山本啓一朗氏は、プロジェクトマネジメントスキルを持った人材の、商工会議所のように地元の立場でコーディネートを行う団体への投入が急務だと語る。

支援企業側においても、取組み姿勢により明暗が分かれた。マッチングを行うにあたっては、被災企業が支援企業の要望に応えられないケースも多かった。こうした中プロジェクトが形になったのは、柔軟な対応で施策を調整する姿勢を持った企業だった。山本氏によると、これらの企業は、いずれも中長期的な視点で支援活動に取り組む意義を見いだしている企業だと言う。

今後は南三陸や亘理でも実施

今回の「結の場」では、地域の人間関係が深まったことも収穫だと山本氏は話す。震災前はつながっていなかったような地域の企業同士が連携し、共同の通販カタログを作る動きも始まった。その過程では自らのノウハウを積極的に共有しあう雰囲気が育まれており、「三陸海産物という素材が良いだけに、地域としての連携による事業拡大のポテンシャルは大きい」と手応えを感じている。

「結の場」は石巻に続き、今年2月には気仙沼でも実施された。8月を目処に成果が発表され、さらに南三陸や亘理・山元での開催も予定されている。民間企業による連携は復興の鍵になる。今後より多くの企業が参画し、価値創造が加速することが期待される。

「結の場」でマッチングが成立した主なプロジェクト

文/今井麻希子

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