[先進事例インタビュー]B2BからB2Cへ事業転換を遂げた小野食品

小野昭男代表取締役。マーケティングの中心という コールセンターをバックに。

小野昭男代表取締役。マーケティングの中心という コールセンターをバックに。

 震災後に事業構造の転換を図りながら、震災前の水準まで売上を回復させた岩手県釜石市の水産加工企業、小野食品株式会社。代表取締役の小野昭男氏にその戦略と共に、今後の三陸水産業の展望を聞いた。

Q 水産業の現状をどう見るか?

 震災で出荷ができなくなった事業者は、他の事業者に市場を奪われてしまうケースが多く、事業再開しても前からの顧客との取引が戻らず苦戦している。さらに放射能の風評被害や、大手小売り業界のプライベートブランド強化による中小スーパーマーケットの縮小など市場環境は厳しい。その中で我々は、震災前以上に稼ぎだす力をつける必要があり、事業内容やターゲットなどを、見直ししなくてはならない状況にあるのではないか。   

Q どのようにして売上回復を実現したのか?

 業務用事業から、消費者の方々にダイレクトに販売する事業主体にビジネスモデルを見直した。全国の得意先を訪問して今後の販売についてお聞きしたところ、顧客の業種業態による意向に偏りがあることが分かった。比較的取引の減少幅が少なかったダイレクト販売に経営資源を集中する決断をした。

Q どのようなダイレクト販売をしているのか?

 「頒布会」という、旬の魚料理を毎月届ける、継続販売モデルが主軸。震災前から取り組みを始め、震災時に毎月5千人のお客様が購入するまでになった。震災後もその数は増え、現在1万5千人までになり、業務用事業の落ちこみを補っている。これを軸にしながら、同じターゲット層を狙う業務用のお客様にも商品提案を行っていく。 

Q 顧客開拓のマーケティング手法は?

 自前のコールセンターを活用して、お客様からの問合せや要望、クレームなどを一つひとつ整理し、これを分析しながらサービスの改善や商品開発へつなげている。例えば「あの商品は味が濃い」「旅行に行くから今月はいらない」こうした一つひとつの声は宝であり、どんなお客様がどのように食べているのかを把握できる。

 目の前の顧客に満足してもらうことを意識している。市場が大きければ買ってくれる人もいるだろう、というのではなく、小さなところでファンをつくり、そこでシェアが取れるビジネスを目指す。そのためにどんな商材がよいか、どんな売り方がよいのか、手の届く小さな範囲から実験を愚直に繰り返し、声を集めてモデルを検証する。この事業を始めた時は126人のお客様。そこからのスタートだった。

Q 今後の三陸水産業の展望は?

 三陸地方は世界三大漁場から豊富な魚種が水揚げされ、加工に向いた原料が比較的安価に仕入れられる恵まれた立地にある。一方、加工や組み立てという従来からの工程だけに特化していると、同じ事は中国でもっと安くできると競争にさらされてしまう。

 加工や組み立ての少し川上(原料側)や川下(顧客側)にオリジナルな工夫を加え味や質に結びつける必要がある。原料に近い立地を活かしてどのように付加価値の高い加工ができるか、という開発を行ったり、大手小売業の売り場だけに頼らない消費者に向けた取り組みも必要だ。

 特に川上部分は、物流や設備もからむので、地域全体として取り組む必要があるだろう。今までは個々が復旧に努めてきたところもあり、まさにこれからだ。地域内で課題を共有しながら共に取り組んでいくことで、地域独自の価値を磨いて行けるのではないか。

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