編集後記vol.22

 約2年勤めた会社を1月末に飛び出し、その2週間後、私は仙台にいた。河北新報社のインターンに参加するためだ。被災現場を見ては、「何を伝えたいのか」と取材レポートの執筆を繰り返した。

 「風化に抗うために何ができる?」何度も自分に問いかけた。でも答えは見つからない。スキルもない、お金もない、東京の小娘。無力感でいっぱいだった。

 1週間ほど経ったある日、語り部タクシーの運転手さんに、津波の被害に遭った若林区荒浜を案内してもらった。

 「最初は思い出すのが辛くて、正直やりたくなかった」。車を運転しながらぽつりと呟いた。「でも、もう自分と同じ思いをする人を見たくない。だから伝えることにしたんだよ」。

 青春時代、浜で釣りや花火をしたことを、懐かしそうに語ってくれた。

 この時、ある決意が生まれた。「彼の“代役”になる」。

 一人ひとりが出会った人に自分の見たこと・聞いたことを直接伝えること(=語り部になる)。地味ではあるかもしれないけれど風化の抗いの、一番の力になるのではないだろうか――。

 3週間のインターンを終えて帰京した私は、現在新聞記者を目指し就職活動中。いつか立派な「語り部記者」になって、運転手さんにまた会いに行きたい。(N)

1件のコメント

  1. 上田正浩 返信

    伝え続けることが一番大事だと思います。「語り部記者」目指して頑張ってください。

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