<原発避難者の帰還>復興展望のコミュニケーション強化を

積極的に施策を展開する浪江町

 浪江町の住民意向調査結果が公表された。3割の住民が避難指示解除後も「町には戻らない」と回答したとメディアで報道されたが、逆に言えば7割に帰還の可能性があるということだ。個人的には前向きな結果として捉えている。

 避難者の方々の帰還へ向けて何が必要なのか。私は避難者とのコミュニケーションが重要だと考えている。放射能リスクもそうだが、特に生活をイメージできるような復興の展望に関するコミュニケーションだ。

 調査において、帰還意向ありの方々は上下水道などのライフラインの復旧、医療機関の整備、スーパーなどの商業施設の再開、などを帰還にあたって重視すると回答している。一方、多くの避難者の方が「先が見えない」「生活のイメージができない」と感じているのが現状だ。ただし、町側に計画が全く無い訳ではない。新しくユニークな計画をつくるというよりも、あるものをしっかり伝えることが重要だ。そうすることでもっと帰還に向けての気持ちは高まっていくだろう。

浪江町 住民意向調査結果 帰還にあたって最も重視したい条件

 具体的な施策としては、大きく2つの方向性が考えられる。1つはリアルなコミュニケーションとして、避難住民を巡回して情報を伝える復興支援員の活用だ。浪江町ではこれまで千葉県と山形県に配置していた支援員を、4月より新潟県、埼玉県、京都府にも配置する。こうした取り組みはぜひ、他町村含めて実施すべきだろう。もう1つは、テクノロジーを活用した施策だ。先日グーグル社は浪江町警戒区域のストリートビューを公開した。これにより極端な部分に集中しがちなメディア報道だけでなく、避難者は自ら町の状況を確認する事ができるようになった。まだ一歩でしかないが、あらゆる手段で「町のいま」を伝えていく努力が必要だ。

 今月発表された区域再編を受け、浪江町では4月より一部の区域への立ち入りができるようになる。一方、本格的に町民がそこで生活できるまでにはまだ2年3年と時間が必要だ。長期戦となるからこそ、生活をイメージできるような復興展望のコミュニケーションが重要なのだ。

文/藤沢烈(RCF復興支援チーム)

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