復興の中でのエネルギーシフトの形 エネルギーは地域で使いこなす

「キコリ養成講座」はチェーンソー講習からスタート

「キコリ養成講座」はチェーンソー講習からスタート

震災と原発事故により、エネルギー転換への意識が高まっている。今年7月からは再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まり、企業や自治体等が発電事業に続々と参入している。こうした中注目されるのが、被災地東北の復興の中での自然エネルギー活用だ。

11月17日、自然エネルギーによる被災地支援を行う「つながり・ぬくもりプロジェクト」のシンポジウムが仙台市内で行われた。震災を受けNPO等が中心となり立ち上げた同プロジェクトは、草の根ネットワークを活かし太陽光・太陽熱・バイオマス機器・設備を被災地約250カ所に設置支援してきた。

「復興からのエネルギーシフトをめざして」と題されたパネルディスカッションでは、福島県いわき市で市民太陽光発電所作りに取り組むNPOや、宮城県山元町で太陽熱温水器を使ったいちご栽培に挑戦する農業法人などから6人のパネリストが各地域での取り組みを紹介した。

繰り返されたのが「自然エネルギーは地域の自立のためのツール」という考え方だ。非常時にも電源や熱源となる自然エネルギーを素早く地域の人が使いこなし、地域の事業者や住民が主体となった取り組みにより雇用創出や地域の専門性を向上させる。分散型の自然エネルギー利用への転換を契機に地域経済・社会の中に富の循環を生み出すという考えだ。

シンポジウムでは会場も交えエネルギー社会のビジョンを描いた

シンポジウムでは会場も交えエネルギー社会のビジョンを描いた

課題は、地域の事業者や多くの住民が参加できるエネルギー転換の仕組みをどうデザインするかだ。自然エネルギーの知識や技術を持つ人材育成や、関連事業の創出なども必要になる。

この日登壇したNPO法人日本の森バイオマスネットワークは、エネルギー利用を含む森林資源の循環活用に取り組みながら、副業として林業収入を得る林家育成のために「キコリ養成講座」を実施している。さらに仕組みの一環として地域通貨システムの構築を目指すなど、自然エネルギー導入とあわせた関連事業を行うことで、地域社会の自立を促している。

震災後、地域が主体となった自然エネルギー導入の重要性が日本全国で叫ばれている。同プロジェクトをはじめとした東北での取り組みは、今後も大きく注目される。

文/氏家芙由子

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