企業による復興支援のこれから 提供型から恊働型へ

現地と企業をつなぐ役割がカギに

今回の震災において、企業による支援活動は復興へ向け大きな役割を担ってきた。1千億円を超えるといわれる支援額に加え、人材・サービス・ノウハウ等を組み合わせ多用な活動が行われている。しかし一方で、来年度以降の活動内容については各社頭を悩ませている。全体的な傾向や先進事例の動きから、今後の指針を探る

経団連
地域に根ざした団体との恊働を

企業の社会貢献活動について毎年調査を行っている日本経済団体連合会(経団連)社会貢献推進委員会。東日本大震災に関しても大規模な調査を行い、3月と10月に報告書(経団連HP参照)を発表し、この分野では最大級のデータベースを保有している。

今後の活動についての調査では、「重視する点」として「現地ニーズの変化」が74%、「課題」として「被災者・被災地ニーズの把握」が73%と現地ニーズ関連がいずれも一位回答となった。これはその重要性とあわせ難しさを表すものであり、政治社会本部主幹の池田氏は「ニーズは刻々と変化しており、更に地域差が大きい。地域に根ざした団体との恊働がカギとなる。活動内容についても、資金や物資をただ提供するだけでなく、強みを活かしながら持ちうるリソースを組み合わせていく必要があるだろう」と話す。

コカ・コーラ
アイデア&スピード

コカ・コーラは10月、岩手県沿岸部の5つの学校にバスを寄贈した

コカ・コーラは10月、岩手県沿岸部の5つの学校にバスを寄贈した

長期支援を目的として、基金の設立や拡充を行う企業も多い。震災直後に、ザ コカ・コーラカンパニーは拠出金25億円をベースに公益財団法人コカ・コーラ教育・環境財団内に「コカ・コーラ復興支援基金」を設立。3年を期間に施策を進めている。

活動内容は①公立小中学校への太陽光発電設置の助成②中高生に対しての海外ホームステイ研修プログラムの提供③現地ニーズに即した直接支援の3本柱。いずれも全社ビジョンである持続可能な社会の実現のための「次世代を担う若者支援」が軸となっている。

3つ目の直接支援については、ニーズに即し柔軟に対応していく。同財団の松鷹常務理事は「ハード面だけではなくソフト面も。実施判断はアイデアとスピード」と話す。実施においては相手方である各地域の行政や教育機関との恊働は欠かせない。現地のボトリング会社と共に地域ニーズに即したアイデアを生み出し、今後3年間、スピーディに実現可能な施策から実施していく方針だ。

凸版印刷
企業連携でモデル事業を

8月に凸版印刷が中心となり「共創造する復興推進プロジェクト研究会」が設立された。同社を含む11業種の企業が参画し、復興支援と企業価値向上を両立させるモデル事業の創出を目指す。

設立の背景について、同社事業戦略本部事業企画部部長の上原氏は「企業の支援活動において、現地ニーズとのミスマッチや、事業活動との両立の難しさ、1社単独での活動に限界が見えはじめるなどの課題が出てきている」と話す。同じ課題を感じていた企業は多く、呼びかけから1ヶ月ほどでプロジェクト発足にこぎつけたという。

現在は現地自治体やNPOとの対話を行いマッチング先や実施事業の検討を進めている。「企業と地域とが、何をできる、してもらうの関係から、共に新たに創る関係へ進化できるかが問われている。各地域の中長期的なビジョンが共有されることが重要」と上原氏は話す。

長期化する復興や地域づくりの活動において、いかに企業のリソースを活用できるか。現地を知るNPO等の役割へ大きな期待が寄せられている。両者の状況を鑑み実現可能な施策へ落とし込むコーディネーション機能が焦点となりそうだ。

大震災支援活動に関する今後の課題

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