多様な働き方や事業ノウハウの移転を促進~内閣府 地域社会雇用創造事業~

1日3時間。子育てママに 合わせた雇用環境を創出

震災後に支援者や観光客の購入が相次いだというまゆ細工商品

震災後に支援者や観光客の購入が相次いだというまゆ細工商品

「え?あの松岡さんが?」

松岡ゆかりさん(50)が合格通知を受け取ったとき、南三陸町戸倉地区はちょっとした騒ぎになった。南三陸町では震災前から、繭玉を加工してキーホルダーや壁飾りをつくる「まゆ細工」が行われている。松岡さんはまゆ細工歴25年のベテランだが、震災前は地元のお祝いに作っていた程度だった。しかし内閣府が行う「復興支援型地域社会雇用創造事業」の助成対象に選ばれ、現在は「起業家」として地域に3名の雇用を生んでいる。

同事業は被災地に起業家600人の輩出と雇用創出を目指して内閣府が実施したもので、十月に支援対象となるすべての起業家が決定した。震災後、南三陸町を訪れる多くの支援者や観光客がまゆ細工を購入したため、松岡さんは製作を加速すべく本事業に申請、支援対象に選ばれた現在は内閣府からの助成金をもとに事業化を進めている。

「私は普通のお母さん」と笑う松岡さん

「私は普通のお母さん」と笑う松岡さん

一見普通のお母さんの起業により、地域には多様な働き方が生まれた。現在、松岡さんのもとでは女性3名が働いているが、就労時間を1日3時間にしたため、子育て中の女性には働きやすいと評判だ。3名全員が震災後初めての就労で、一般企業は就労時間が固定的で働きづらかったという。地元のNPO「ラムズ」の代表・渡辺啓さんは「仮設に閉じこもっていた女性が外に出るきっかけを作った。松岡さんは地域に活力を生んだ」と語る。

よそ者・若者の事業ノウハウを現地へ移転

宮城県石巻市でお弁当屋「ぼっぽら食堂」の経営サポートを行う㈳つむぎやの多田知弥さん(26)も、本事業の助成を受けた一人だ。震災当時は東京にある大手コンサルティング会社に勤務していたが、今年夏に退職した。

ぼっぽら食堂の弁当は、すべて牡鹿漁業協同組合の女性部有志で立ち上げた「マーマメイド」が製造、販売している。にも関わらず多田さんが助成を受けた理由は、経理や原価計算など、地元の運営メンバーがもたない経営ノウハウを持っていたからだ。多田さんはこれまで、弁当の調理・販売以外のバックオフィス業務を行いながら、メンバーでも対応可能な業務の型作りや移管を行なってきた。また、利益を上げるための費用や仕入方法の見直し、コスト削減などの面で過去のコンサル経験を活かした。

現在ぼっぽら食堂は6名の雇用を生んでいるが、効果はそれだけではない。彼の助成審査を行ったNPO法人ETIC.みちのく起業事務局の安部浩二さんは、「多田さんは若くてバイタリティがあり、かつ現地にはないノウハウをもつよそ者。いわゆる若者・よそ者の力が地元に新たな挑戦と成功体験を生んだ」と語る。また多田さんは「今回構築した事業の仕組みはいずれ地元に移管したい」と考えており、ノウハウ移転の観点からも多田さんの起業には価値があったといえる。

地域社会雇用創造事業の実施団体の一つであるETIC.は、本事業への応募者169名のうち約3割の48名が女性だったと回答。また約2割にあたる31名が50代以上のシニア層で、多様な層が手を挙げたことがうかがえる。

周辺地域に生まれつつある効果は、多様な就労形態による就労意識の醸成、事業ノウハウの移転など、内閣府が狙った雇用効果だけに留まらない。東北3県の就労状況はいまだ芳しいとは言えないが、多様な起業によって地域に更なる活力がもたらされることが期待される。

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