岩手県大槌町の挑戦に学ぶ【後編】

町と町民が協働するまちづくり

まちづくりは、人づくり。ハブとなって人を育てる。

Interview2 阿部敬一 おらが大槌夢広場 代表理事

阿部敬一 おらが大槌夢広場 代表理事

—今までの活動をどう振り返りますか。

昨年11月の団体設立から、大槌町における様々なまちづくり事業を行い、産業と生活の再建を目指して来ました。中でも大きかったのは、飲食施設「おらが大槌復興食堂」の運営です。何より、町民や外部の人が集まる「場」ができた。昼は食堂として、時には役場の人の打ち合わせ場所として、また夜には地元の若い世代が集まる飲み屋として、内外や官民の垣根を越えた交流が生まれました。6月30日に行う「大槌ありがとうロックフェス」も、おらがのスタッフでもあるSTANDING STANDINGが主催ですが、様々なイベントや事業が生まれました。

ただしこの食堂事業も、できれば年内には食堂スタッフに引き渡していきたいと考えています。幸い売上も堅調ですし、関わった人がここでの立ち上げの経験を元に自立していくのが理想です。事業創出においては、おらが大槌はあくまできっかけ、ハブ(つなぎ役)として機能していければと思います。

—これからの施策は?

こども議会の準備風景

こども議会の準備風景

まずはこれまでも引き合いが多かったツーリズムです。観光ニーズと、リーダーシップやチームビルディングのためのワークショップ要素を入れた企業研修ニーズ、双方に応えていき、将来的にはMICE(大規模イベント、国際会議等)誘致なども実施していきたいです。町長の目指す「交流人口の拡大」のためにも、ツーリズムはまちづくりの大きな柱になっていくと思います。

また、これからの大槌を背負う若者世代への取り組みにも力を入れます。例えば7月からは「こども議会」という事業を開始予定です。町内の小中学校生20名程度を選出し、町議会への参加や模擬議会を開催するものです。町がどうできているのか学んでもらいながら、町への誇りと、町の将来を担うという意識を醸成したいです。

子供たちは地域の宝です。震災後に高校で住民会議をしましたが、すべての子供たちが「大槌のために何かしたい」と言っていました。中高生から起業家が生まれてもいいと思います。ITを学んだ学生が町の広報を請け負うようなことがあってもいい。色々な可能性を見せて、仕事を自分で創りだすような子供たちを育てたいです。

—まちづくりへの町民参加はいかがでしょう。

シンポジウムの様子

シンポジウムの様子

6月3日に行われたシンポジウムでは、高校生をはじめとする多くの若者が、町長自らがプレゼンする町のビジョンに耳を傾けました。今まで行政と町民はどうしても対立しがちでしたが、1人で壇上に立った町長の姿に空気が変わったのを感じました。プレゼン後の質疑応答でも色々意見が出ました。厳しいものの中にも「町長頑張れ」といった温かい言葉もあり、町民が味方になったようでした。

こうした場を継続しながら、少しずつでも個別のまちづくりプロジェクトを町と町民が協働で進めて信頼関係を構築していくべきだと思います。実際町民からは「こうしてみたい」といった声もあがってきていますし、悲観はしていません。

まちづくりや復興など、色々な言葉が飛び交っています。私は、町をつくるのは人であり、そこにいる人同士が交わり、成長していくことが素晴らしいのだと思います。震災があり、本来の人間の姿がむき出しになりました。だからこそ、まちづくりは、人づくり。この意識で、大槌の町に貢献していきたいです。

「おらが大槌夢広場」の事業全体図
→【前編へ】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です