シリーズ子供たちの未来へ 震災遺児の教育費 各方面から継続的支援を

2012年3月に、高等学校を卒業した震災遺児の進学率は約80%となり、震災前の被災3県の平均進学率約40%に比べ2倍となった。この調査を実施した「みちのく未来基金」は、高い進学率となった理由について「被災の体験を通じて将来地域や社会に貢献できる人材に成長したいと考え進学を選択しようと考える生徒が増えたこと、被災地域の経済復興の遅れから、就職先として受け入れる企業の減少等で地元を離れざるを得ないこと」と分析している。

「みちのく未来基金」は、カゴメ株式会社、カルビー株式会社、ロート製薬株式会社の3社により共同で設立された。サポートの少ない「大学及び専門教育への進学」に焦点を当てた奨学基金で、現在0歳の遺児が大学院を修了するまでの25年間の支援・給付を想定している。一律の給付ではなく、生徒の志望進学先に応じた必要額(年額上限300万円)を支給するといった特徴を持つ。

一方、被災3県の各自治体も震災遺児の支援基金を設立。一律の月額金や一時給付を子供の進学状況に合わせて支給し、安定したくらしや学びができるよう支援する。現在3県で計約128億円の寄付が集まっており、求められる支援を継続するために十分な額ではないものの、万遍なく行き届いた支援に向けて体制を整えている。

震災遺児への支援基金の一部

東日本大震災における18歳未満の震災遺児は約1500人、うち両親を亡くした孤児は200人を超える。あしなが育英会が震災遺児1100人に実施した調査によると、約4割が小学生以下、さらに家計を支える父親を亡くした子供は6割以上に上るという。幼くして親を亡くした割合が高く、早期に夢を諦める子供も少なくない。これからの東北、そして日本を担う子供たちが希望を持って夢を追い続けるためには、長期的・継続的支援が必要なことは言うまでもない。民間企業は業績に左右されるため、中長期的支援に消極的になり、単発的な寄付やイベント開催といった支援に留まってしまう場合が多いが、先の団体のように、数社が思いを一つにし、支援の目的や範囲・期間を明確に定めて取り組む継続支援は好例だ。

阪神淡路大震災から今年で17年、当時の0歳児が高校を卒業する。17年後、東北の震災遺児は希望の進路を見つけられているだろうか。官民のそれぞれが特徴を活かし、安定的に支援が継続されることを願う。

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