【観光復興】前観光庁長官 溝畑宏氏インタビュー

ビジョンを描くリーダーを育成し、
他地域にはないオンリーワンの魅力を発信しよう。

前観光庁長官 溝畑宏氏

前観光庁長官 溝畑宏氏

—自転車で東北地方を巡る「みちのくひろし旅」をされていますね?

車で移動することが多かった観光庁長官の時とは違い、自転車だと、そこに住む方、現場の方と会って直接話ができるのがいいですね。素敵な出会いが沢山ありましたが、日本人が忘れかけているホスピタリティ、おもてなしが東北にはまだあると感じました。これは、観光業において大きな強みになります。

一方、東北の方々は少し謙虚過ぎるとも感じました。観光はビジネス。LCCの参入や空港の国際化が進み、ますます海外旅行が安く手軽になった今、国内外の地域との競争を勝ち抜く強い意志が重要です。

—グローバルマーケットで競争に勝つために何が必要でしょう?

オンリーワンを作ることです。東北には素晴らしい温泉、景観、食文化があります。ただ、厳しい言い方になりますが、それらは他の地域にもある。顧客に選ばれるためには、素晴らしい素材にさらなる付加価値をつけていかないとこれからは難しいでしょう。

オンリーワンをつくるには「こういうまちにしたい」というビジョンを描き、コーディネートできるリーダーの育成が必須です。そして、そのリーダーと住民が共通する成功のイメージを持つことでしょうね。

たとえば、大分の中津江村の坂本休・元村長は、2002年のサッカーワールドカップ日韓大会で、キャンプ場にチームを誘致するために、人口1700人の村ということを逆手にとって世界で最も小さいワールドカップのキャンプ場を目指しました。中津江村成功の最大の要因は、リーダー本人が動いたこと。本人がカメルーンまで足を運び、頭を下げて回り、汗をかいたからこそ村民も動き、風が吹いたんです。

—どのようにビジョンと夢を描くことができるでしょう?

自分で見に行く、聞きに行く、調べに行く。まずはそれがスタートではないでしょうか。体感した感動、興奮を成功のイメージとして目に焼き付けておくんです。すると、それらが夢の原点となるんです。そして、夢を熱く語り続けること。実現する過程には失敗や挫折も多いですよ。しかも、最低でも10年の歳月は覚悟しなければいけません。誰でも簡単にたどり着けるようなゴールでは、夢とは言えないですから。

地元のリーダーが、10年後、20年後、自分たちのまちをこんなふうにしていくんだという未来を描き、その夢に向かって真剣に努力する姿を見たら、いやでも周りは応援したくなります。僕がみちのくひろし旅をする大きな目的に、夢を持ったリーダーたちと出会いたいという思いがあります。もし彼らが夢を実現するにあたり悩んでいることがあるなら、なんとか手助けできればと思っています。

溝畑宏(みぞはた・ひろし)
1960年生まれ。1985年自治省入省。2002年大分県企画文化部長。04年大分フットボールクラブ(大分トリニータの運営母体)代表取締役。10年から第2代観光庁長官。12年3月に退任。 同5月より内閣官房参与。現在は東北の観光PRを行いながら旅する「みちのくひろし旅」を実施中(シーズン3:7月5日~10日)。旅の継続のための個人協賛も募集している。問合せはhiroshitabi@gmail.comまで。

(取材・文/小泉咲子)

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