沿岸被災市町の水産事業 有効な復興支援のあり方とは 規模と特性に合わせ戦略的に推進を

被災沿岸地域において漁業・水産加工事業は、基幹事業として産業と雇用を支えてきた。地域の復興を考える上で、漁業・水産加工事業の早期再開、早期復興は重要なテーマである。被災沿岸地域の水産加工事業調査を行い、地域の特徴と支援のあり方を考える。

沿岸部水産事業を 規模と特性で分類

図は水産加工事業の従事者数をもとに、都市別の水産加工事業の特徴を示したものである。縦軸は、水産事業(漁業と水産加工事業)者数を示し、事業の規模を表している。規模の大きい市町としては、石巻市、気仙沼市、宮古市、大船渡市、塩竃市などが挙げられる。

横軸は、水産事業従事者における加工事業従事者の比率を示し、水産事業における加工事業の割合(加工度)を表している。仙台市、塩竃市、気仙沼市、石巻市、女川町など、特に宮城県で水産加工度が高い。一方、陸前高田市、山田町、釜石市、宮古市など、岩手県では水産加工度が比較的低い。

円の大きさは、市町の全人口に占める漁業・水産加工事業従事者の比率を示し、大きいほど地域における漁業・水産加工事業の重要度が高いことを示す。

あくまで機械的に分類したもので、一概には言えない面もあるが、各市町の特徴は大きく3つのパターンに分かれると考えられる。一つ目は、「大規模水産加工都市」である。水産事業の規模が大きく、加工事業者の比率も高い地域で、石巻市や気仙沼市がこれに分類される。次に、「中規模水産加工都市」である。水産事業の規模は比較的小さいが、町における水産事業の重要度が高く、加工事業者の比率も比較的高い地域で、女川町、大槌町などがこれに分類される。最後に、「小規模漁業都市」である。水産事業の規模が小さく、加工事業者の比率も低い地域で、宮古市、大船渡市、南三陸町などが分類される。各分類それぞれの特性に合った復興支援を行うことが有効になってくる。

都市のタイプ分類と支援アプローチのイメージ

規模・パターン別の 目指すべき方向性

大規模水産加工都市においては、通常の復旧支援だけではなく、復興につながる新規性の高い事業への支援が求められる。例えば、たらこの生産量は石巻市が日本一でも、消費者には「福岡の明太子」というブランド力の方が強かったように、業者間の競争ではなく、地域をあげてブランドを構築する視点が必要になる。有力事業者と連携したり、複数事業者を巻き込むなど、ブランド開発の新たな成功事例を早期に創出することが求められる。次に、中規模水産加工都市では、リーダーシップのある中核となる水産加工事業者の再建支援が有効である。これにより、漁業者の買い支えも含めた、町全体の復活を支援することにつながる。最後に、小規模漁業都市では、6次産業化の推進が有効である。漁業者が魚を獲って終わりではなく、水産加工事業者と連携することにより加工度を高め、それによって付加価値の向上、新たなブランドの創出を実現するものである。

沿岸被災市町のパターンに応じて、復興に向けて目指す方向性や方策は異なってくる。さらに地元の事業者や従業者のニーズも反映させることで、より効果的な復興支援が可能となる。

(調査・分析/RCF復興支援チーム)

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