大槌町の財産・鮭を全国へ!4人で立ち上げる新ブランド

[笑顔の架け橋Rainbowプロジェクト]

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ど真ん中・おおつち協同組合震災後の平成24年4月、水産加工会社である芳賀鮮魚店、浦田商店、小豆嶋漁業、ナカショクの4社が合同で立ち上げた組合です。カタログによる通信販売のほか、直売所の運営も行っています。さらに、念願だった自社ブランド「おおつち物語」を立ち上げ、鮭をメインにしたオリジナル商品の開発にも取り組んでいます。

地元・大槌町への想いが4人を結びつけた

「この4人がそろわなければ、今の私たちはなかった」

そう語るのは、芳賀鮮魚店の芳賀政和さん。ど真ん中・おおつち協同組合の理事長です。組合の理事には、芳賀さんをはじめ、浦田克利さん、小豆嶋敏明さん、齊藤勲さんの4人が名を連ねています。

ど真ん中・おおつち協同組合は、この4名がそれぞれ代表を務める芳賀鮮魚店、浦田商店、小豆嶋漁業、ナカショクの4社が合同で立ち上げました。震災からおよそ1年後の2012年4月のことです。

岩手県のやや南の海岸沿いに位置する大槌町は、「新巻鮭」発祥の地といわれ、400年もの歴史を持っています。しかし、震災によって漁船流出約600隻(75%) 定置網4か統(100%) 漁港施設 荷捌き所冷凍庫 水産加工場20事業(ほぼ100%)が津波で施設流出し生産高92億円の産業が壊滅し水産業は大きなダメージを受けました。そこで立ち上がったのが、地元の水産加工会社4社です。

「やる気・ノウハウはあります、資金がありません」

4人は自分たちの現状を思い切った言葉で表し、全国から資金を募りました。「協力してくれた人にはお礼に新巻鮭を送ります」というユニークな取り組みも功を奏し、応えてくれた人はなんと5,000人。「こんなに支えてくれる人がいる…!」支援してくれた人に応えるため、大槌町を盛り上げていくため、4人は協同組合を立ち上げました。

大槌町の湾内にはひょうたんの形をした蓬莱島があり、『ひょっこりひょうたん島』のモデルになったと言われています。

大槌町の湾内にはひょうたんの形をした蓬莱島があり、『ひょっこりひょうたん島』のモデルになったと言われています。

念願のお客様と触れ合う直売所

組合の事務所は、5回の移転の末、現在の場所に落ち着きました。「お客様と直接触れ合うことができる場を作りたい」という4人の希望で、直売所を併設しています。

魚市の目の前に建てられた直売所には、4社の商品に加え、大槌町の名産品も並んでいます。観光ツアーで立ち寄ってもらい、新巻鮭を作る体験イベントを行うなど、サポーターとの交流を意識した運営を行っています。震災の時に支えてくれたサポーターの人たちとのつながりは、4人の大きな力となりました。

念願の直売所ができたことで、組合とお客様とを直接結ぶ場ができました。4人は、さらなる目標に向けて動き出します。

「組合のオリジナル商品を作りたい――」

さまざまな商品が並ぶ直売所。食堂も併設されており、地元の食材にこだわったメニューを充実させていく予定です。

さまざまな商品が並ぶ直売所。食堂も併設されており、地元の食材にこだわったメニューを充実させていく予定です。

今までになかった商品を

これまでは、各社が作った商品を販売してきました。しかし、いずれは組合として商品開発をしたい――。ずっと温めてきた想いです。もちろん主役となるのは、大槌町の財産である鮭。4人は「おおつち物語」というブランド名に願いを込め、商品開発に取り組み始めました。

意識したのは、「今までになかったものを」というコンセプトです。ただ「おいしい鮭」を訴えても、ありふれた商品であれば目を引くことができません。それならば、鮭を使ったまったく新しい商品を作り、興味を持ってもらおうと考えたのです。

例えば、小豆嶋さんが取り組んだのは鮭のソーセージでした。もちろん、水産会社にはソーセージを作るための機械などありません。手作業で腸詰めを行い、試作を行います。当初は鮭の割合を高くし、鮭本来の味わいを生かしたいと考えていましたが、ソーセージにしてみるとなぜだか物足りません。加工することによって淡白な味になってしまっていました。そこで小豆嶋さんはプロにアドバイスをもらうことを思いつきます。東京の著名なシェフを紹介してもらい、やり取りを始めたのです。

試作品を送り、シェフに試食してもらって改良点を洗い出します。「分量をこう変えてはどうか」というアドバイスを受け、その通りに作ってみても、何が違うのか思うような味になりません。配合を調整し、再度アドバイスを求め…。開発期間は数ヶ月に及びました。

小豆嶋さんが作り上げた鮭のソーセージ。ソーセージの本場・ドイツを意識したしっかり目の味付けです。

小豆嶋さんが作り上げた鮭のソーセージ。ソーセージの本場・ドイツを意識したしっかり目の味付けです。

小豆嶋さんはソーセージと並行してリエットも開発。また、齊藤さんは冷凍の海鮮パエリアや寿司に挑んでいました。炊いた米を冷凍するというのは高度な技術が必要ですが、そこを乗り越え、大手スーパーでも販売されるほどの品質に仕上げました。

齊藤さんが開発したパエリア。大きなエビやイカが並んでいます。電子レンジで温めればすぐに食べることができます。

齊藤さんが開発したパエリア。大きなエビやイカが並んでいます。電子レンジで温めればすぐに食べることができます。

「おおつち物語」で、大槌町を盛り上げたい

現在直売所には、ソーセージ、リエット、パエリア、寿司、餃子など、「おおつち物語」ブランドのさまざまな商品が並んでいます。どれも4人が苦心の末に生み出した商品です。

しかし、「おおつち物語」は産声を上げたばかり。「まだまだこれからですよ」と浦田さん。「まずはこのブランドを認知してもらうことから。5,000人のサポーターの皆さんに知ってもらい、食べてもらって、生の声を聞きたいですね」

組合のブランドだけではなく、大槌町をどう盛り上げていくのかも今後の課題です。新巻鮭の体験イベントに参加した方からは、「また来年来ますね」という声がたくさん上がったといいます。鮭の力で、「おおつち物語」で、町をもっと元気に――。4人の取り組みは始まったばかりです。

「海の約束」という言葉には、受けた恩に必ず応える、という強い想いが込められています。

「海の約束」という言葉には、受けた恩に必ず応える、という強い想いが込められています。

ど真ん中・おおつち協同組合
ど真ん中・おおつち協同組合
岩手県上閉伊郡大槌町安渡522番
0193-42-5039
URL:http://www.domannaka.com/

記事提供:NTTdocomo「笑顔の架け橋Rainbowプロジェクト」