健康で笑顔あふれる、岩手県山田町に

[笑顔の架け橋Rainbowプロジェクト]

01カッキー’S 
岩手県立大学卒業生で山田町保健師の尾無徹さんと同大学看護学部生による有志のボランティア団体「カッキー‘S」。
震災直後の2011年11月から、月に一度山田町の仮設住宅を訪問し、主に仮設住宅の住民への支援活動を行っています。

若い力での長期支援の必要性

「カッキー’S」の立ち上げに貢献した尾無(おなし)徹さん

「カッキー’S」の立ち上げに貢献した尾無(おなし)徹さん

震災当時、山田町の保健師1年目として働いていた尾無(おなし)徹さんは、自身も被災をし、避難所生活も経験します。そして、保健師として被災者と接していくなかで、「復興まで(の年数は)長くなる。」と強く感じていたそうです。
復興への道のりは長くなる。それならば、次の世代の若い人たちがもっと深く関わっていく必要性を強く感じていた尾無さんは、ボランティア団体の立ち上げを思い立ちました。
ボランティア団体を立ち上げる際に、母校の岩手県立大学 準教授の井上都之(いのうえ さとし)先生に相談します。折しも、井上先生も大学としての支援を考えていたところだったということもあり、団体立ち上げに協力をしていただけることに。
そして2011年11月に8名の学生とともに、ボランティア団体「カッキー’S」を発足させます。
「カッキー’S」の名前の由来には、二つの意味が含まれています。
ひとつは山田町名産の牡蠣を連想させる「カキ」、もうひとつは、町を“活気”づける「カッキ」。
現在「カッキー’S」には、約90名のメンバーが登録をしており、毎月平均して約30~40名の学生が山田町を訪問しています。

活動を通して得られるかけがえのないもの

「カッキー’S」の取り組みについて話す尾無さん

「カッキー’S」の取り組みについて話す尾無さん

現在の主な活動は、毎月第三土曜日におこなわれる山田町の4ヶ所の仮設住宅でのサロン活動です。
「うどん作り」や「クリスマス会」や「餅つき」など、学生たちが主体となり企画したイベントを行っています。発足当時から続くイベントも多くありますが、学生たちのアイディアによるその内容は年々ヴァージョンアップをしているそうです。
その他にも、看護学部生という専門性をいかした「血圧測定」や「アロママッサージ」などのほか、運動不足を少しでも解消できればと考えられた「カッキー’S体操」の指導や、健康についての勉強会なども開催しています。
また、このような活動を通して、高いコミュニケーション能力を身につけ大学を卒業していく学生も増え、学生にとっての「カッキー’S」は、卒業後の社会人生活のためのスキルを磨く、生きた学び場ともなっているようです。

被災者がいかに健康に生活できるか

震災から数年経つと、気になるのは被災住民の健康状態。
特に、岩手県立医大の脳卒中発症数についての調査によると、岩手県沿岸部の山田町、大槌町、陸前高田市では、2011年4月~12年3月にかけて月平均0.9人だったのに対し、2012年4月~2013年1月には月平均5.2人と、月平均患者数が約5倍以上に増加しています。
*参考https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/sped/1306cv/201306/531089.html&pr=1

山田町保健センター内の運動不足解消を目指す運動ジムスペース

山田町保健センター内の運動不足解消を目指す運動ジムスペース

仮設住宅での生活が長期化すると、体の健康面はもちろんのこと、心の健康も気になるところとなり、特に高齢者の自殺には深刻な問題です。
カッキー’Sの活動に参加をしている住民の多くは70代で、そのほとんどが女性。
女性に比べると、男性の参加率は極端に少なく、ほとんど外出をしないという住民も少なくありません。
「仮設住宅での生活が長期化することにより、その住民も高齢化していきます。益々生活不活発病も増えて行くことが考えられます。生活不活発病は、予防ができますから地域全体に働きかける必要があることを感じています。」と、尾無さんはいいます。

笑顔のあふれる居場所をつくるために

山田町保健センター内の運動器具は古いものがまだ多い

山田町保健センター内の運動器具は古いものがまだ多い

生活不活発病を防ぐには、環境を整えることも重要なポイントのひとつ。
「カッキー’S」は住民が容易に足を運ぶことができる「居場所」を作りたいと考えています。
現在、「カッキー’S」の活動は、仮設住宅を訪問するという形を取っていますが、いずれは仮設住宅が減っていくことが考えられることから、「仮設」ではない保健センター内での「常設」の「居場所」づくりを支援していく予定だそうです。
そのひとつの試みは、山田町保健センターへの運動器具を送るプロジェクト。保健センター内の、運動不足解消を目指す運動ジムスペースに設置されているいくつかの運動器具の大半は30年以上前の古い器具ばかりでしたが、最近、3台の最新の運動器具が寄附されたそうです。しかし、若い年代の方にも利用をしてもらいたいということを考えると、とても十分とは言えず「少なくても、あと2台は欲しいんです。」と尾無さんはいいます。
「運動器具はもちろんですが、本などもいろいろ充実させていきたいですね。家を出るのはおっくうだけど、保健センターにはいろいろあるから行きたいと思ってもらえるような居場所が作れたらいいですよね。」
運動器具の他には、全身のマッサージが可能なマッサージチェアが欲しいという高齢者からの声もあるようです。

最近寄附された新しい運動器具

最近寄附された新しい運動器具

「ひとりでも多くの方の笑顔と健康のために、これからも支援を続けて行きたい。」という尾無さんや「カッキー‘S」の学生達をぜひ応援してください。


カッキー’S 
岩手県山田町(岩手県立大学看護学部任意団体)

記事提供:NTTdocomo「笑顔の架け橋Rainbowプロジェクト」