地方公共交通の課題に挑む[笑顔の架け橋Rainbowプロジェクト]

01福島交通株式会社
昭和61年設立の福島交通株式会社は、福島県中通り(国道4号線・東北本線沿線)を主な営業エリアとして、路線バス、高速バス、飯坂電車、貸切バスなどの運営を行っています。東北6県のなかでは、いち早くICカードを導入するなど地方公共交通の活性化に積極的に取り組んでいます。

避難者輸送にバス50台をフル稼働

震災時は所有するバス約500台が毎日フル稼働だった

震災時は所有するバス約500台が毎日フル稼働だった

「福島交通」は、東日本大震災の発生直後から「避難者輸送」に尽力しました。
震災発生直後は、災害対策本部からの電話の内容と、実際の現場の内容とでは全く違うということも多く、行ってみないとわからない、やってみないとわからないという、情報が混乱する中での過酷な輸送業務だったといいます。新幹線も動いていなかったことから、バスが輸送の要となり、福島交通は所有するバス約500台を毎日フル稼働させる日々が続きました。
震災後は、車を自由に運転することのできない仮設住宅に暮らす高齢者のために、買い物や通院のための路線を新しく設け運行しています。

東北6県でいち早くICカードを導入

地方路線バスの活性化に力を尽くす武藤泰典社長

地方路線バスの活性化に力を尽くす武藤泰典社長

地方公共交通の利用客数の減少は、今や全国的な問題となってきています。
「地方公共交通の活性化における民間会社の役割は、大きなテーマです。全国の地方バス会社は、(きっと)みな同じ問題を抱えていると思います。」
と話すのは、福島交通株式会社の武藤泰典社長。

その取り組みの一つとして、バス会社として東北6県で最初のICカードの導入をおこないました。
ICカードを導入により、さまざまなデータの取得が可能になることから、お客様のニーズもつかみやすくなってきています。
「ご高齢の方で、(料金の支払いに手間取り)他の方に迷惑をかけてはいけないということで、自分の降りるバス停の少し前から、停まるたびに一つずつ席を前の方へ移動されたりする方がいらっしゃいます。それが、バスの車内事故につながることもありましたが、ICカード導入後はこのようなバスの車内事故も少なくなりました。」と、武藤社長。
小銭の準備をして運賃を支払うという作業は、高齢者にとって、なかなか手間がかかるものです。しかし、ICカードであれば降りる時にタッチするだけでいいため高齢者からも評判が良く、結果的にはICカード導入は、バス利用者の増加へとつながりました。
このICカードの名称は社内募集により、「NORUCA(ノルカ)」に決定。2015年4月からは、飯坂電車での利用も可能となりました。

利用者を増やすため、しっかりと情報発信を

休日100円サービスの旅のリーフレット

休日100円サービスの旅のリーフレット

福島交通では、利用者を増やすためのさまざまな試みがおこなわれています。
そのひとつが、震災前から取り組んでいた「休日100円サービスの旅」。
これは、福島交通の通勤定期を持っていれば、定期の区間外でも土日祝日のバス・飯坂線が1回乗車100円で利用でき、なおかつ同乗の同居家族も全員1回乗車100円(子供は50円)という大盤振る舞いなサービスなのです。
地方の路線バス移動は移動距離が長いことから、運賃も移動距離に比例して高めとなることがあるので、1回乗車100円で移動できることはとても魅力的です。
「福島県のいろいろなところを周って、温泉に入ったり、おいしいものを食べたりして、ご利用客の方はもちろん、地域も元気になればと思います。」
「例えば、福島駅から土湯温泉まで通常往復1,680円かかるところを、往復200円で行けるというわけです。路線バスを使ってどれだけお得な旅を作れるか、プランを立ててみるだけでも面白いかもしれませんよ。」
「しかしながら、(このサービスも)認知度が低かったという現状があるので、そのことをしっかり認識してPRする必要があります。」と、武藤社長。
2013年の7月からは、専用サイトも用意してPRしています。
http://100yen.fukushima-koutu.co.jp/

県内外の方へ向けての新商品開発

「福島バス物語」は、ネットと電話で予約ができる

「福島バス物語」は、ネットと電話で予約ができる

県内利用者だけに限らず、県外の方も利用できるサービスとして開発されたのが、各施設利用券と高速バスや路線バスの乗車券が一緒になったお得なセット券「福島バス物語」です。
この「福島バス物語」を運営するのは、福島県観光二次交通連絡協議会。
この協議会は、震災後、住民の県外流出や観光客の減少という課題解決のために、福島県内の4つの大手路線バス会社(福島交通株式会社、新常磐交通株式会社、会津乗合自動車株式会社、磐梯東都バス株式会社)により、2013年7月に立ち上げられました。
この「福島バス物語」の発案者は武藤社長。
「路線図を見ると、バスは網の目のように県内を網羅していて、通勤、通学、通院だけで利用しておくのはもったいない。路線網の中には、福島県内のおおよその観光施設が拠点として配置されているので、これを観光のニーズとして取り込めば、きっと利用者にもうれしい商品になるのではと考えました。」
現在、「福島バス物語」はネットと電話で予約でき、前日17:00まで予約可能プランと、当日15分前まで予約可能プランをもっているので、気軽に、ひとりでも利用できます。

福島バス物語
電話:024-597-7950
URL:https://busmonogatari.com/

最後に、福島生活7年目を迎えた武藤社長に「福島の良さ」をうかがいました。
「福島は、良い温泉も多く、果物など食べ物もおいしい。それにプラスして“人が良い”ですね。」
「都会の生活では、情報があふれ、複雑な人間関係の中で自分を見失いそうになることもあると思いますが、福島は、自分が自分でいられるということを実感できる場所でもあると思います。」

福島交通株式会社
住所:福島県福島市東浜町7番8号
電話:024-533-2131
URL:http://www.fukushima-koutu.co.jp/
URL:http://100yen.fukushima-koutu.co.jp/
URL:https://busmonogatari.com/

記事提供:NTTdocomo「笑顔の架け橋Rainbowプロジェクト」